保存修復|オールセラミック修復の形成で、何がどれだけ歯質を削るのか。3Dソフトで形成デザインを720通り作り、削除量を計算したデジタル in vitro 研究(Seidel ほか 2025・Clinical Oral Investigations)
セラミッククラウンの形成。材料の厚みは確保したい、でも歯質はできるだけ残したい。ドイツ・フランクフルト大学のグループは、上顎第一大臼歯の樹脂模型をスキャンし、3Dソフト上で「マージンとCEJの距離」「シャンファーの深さ」「形成角」「咬合面の削除量」を変えた形成を720通り作って、削られる体積を計算しました。削除量は歯冠の9〜70%。いちばん効いたのはマージンの高さで、CEJから1mmの位置では55.3%、6mm離すと16.9%でした(厚み1mm・形成角8°)。次がシャンファーの深さ。部分被覆冠(ここではマージンをCEJから4mmに置いた形成・二ケイ酸リチウム厚み1mmで27.3%)は、薄く作れるジルコニアのフルクラウン(厚み0.5mmで43.0%)より削る量が少ない計算でした。模型1本の計算で、強度や長期成績は調べていません。
①セラミック冠の形成、どこで一番削っている?
オールセラミックのクラウンを形成するとき。「材料の厚みは確保しないと割れる」と教わる一方で、「歯質はできるだけ残したい」とも教わります。では、形成のどの条件が、歯をいちばん多く削っているのでしょうか。
この論文は、上顎第一大臼歯の模型を3Dソフト上で720通りに形成し、削られる体積を計算しました。結論を先に書くと、いちばん効いたのはマージンの高さ(CEJからの距離)で、次がシャンファーの深さ。厚み1mm・形成角8°の条件で、マージンをCEJから1mmに置くと歯冠の55.3%、6mm離すと16.9%でした。形成角と咬合面の削除量の影響は、それより小さめでした。これは実際の患者さんではなく、模型1本のデジタル計算(in vitro)です。
②なぜ「削る量」を測り直したのか
セラミックやレジンのモノリシック修復には、材料ごとに必要な厚みとクリアランスがあります。一方で、削りすぎは歯髄への影響や、将来の根管治療のリスクにつながりうる、と著者らは緒言で述べています(引用文献にもとづく記述で、この研究で確かめたものではありません)。
形成量を測った先行研究はありますが、多くは手で形成した歯を重さ・体積・マイクロCTで測ったもので、条件をそろえにくく、術者のばらつきも入ります。また、臨床で測られた収束角は推奨の16°より大きいことが多い(285本の形成で平均22.9°、690本で石膏模型30.48°・口腔内スキャン32.85°、上顎大臼歯のSTLデータで平均26.7°などの報告)と引用しています。そこで著者らは、条件を1つずつ正確に変えられるデジタルの形成で、各因子の影響を切り分けようとしました。
③今回の研究:模型1本を720通りに形成して計算
変えた条件(4つ):
・マージンとCEJの距離:1〜6mm(6段階)
・シャンファーの深さ:0.2〜1.6mm(0.2mm刻み・8段階)
・形成角:6・8・10・12・14°(5段階。形成角は収束角の半分で、8°=収束角16°)
・咬合面の削除量:0.5・1・1.5mm(3段階)
→ 組み合わせは計720通り。
評価:歯根を落とした歯冠の体積に対する削除量(vol%)。計算で決まる値なので、統計検定は行わず図表で比較。
修復の種類の読み替え:図5〜8と表5では、マージンがCEJから6mm=咬合面オンレー、4mm=部分被覆冠、1mm=フルクラウンとして比べています。
④結果:マージンの高さがいちばん効いた
720通りの削除量は、歯冠の9〜70%に広がりました。まず、マージンの高さだけを変えた図です。
マージンをCEJに1mm近づけるごとに、削除量は1.16〜13.75ポイント増えました(ほかの条件によって幅がある・表1)。増え方は一定ではなく、CEJから2mm→1mmの区間で最も大きく(8.68〜13.75ポイント)、CEJに近づくほど加速していました。
・シャンファーの深さ 0.2→1.6mm:39.9%→64.8%。0.2mm深くするごとに0.20〜4.52ポイント増え、深くなるほど増え方は小さくなった(表2)
・形成角 6→14°:53.2%→61.2%。2°ごとに0.01〜2.69ポイント増で、ほぼ直線的(表3)
・咬合面の削除量 0.5→1.5mm:53.0%→57.6%。0.5mmごとに0.98〜6.13ポイント増(表4)
ただし修復の種類で効き方は変わります。形成角を6→14°にしても、咬合面オンレーは16.8%→17.2%、部分被覆冠は26.6%→29.3%とほとんど動かず、形成角の影響はフルクラウンで大きかった。一方、咬合面オンレーでは咬合面の削除量(12.5%→21.8%)のほうが、シャンファーの深さ(14.7%→18.6%)より大きく効いていました。
次に、材料メーカーが指定する最小の厚みを当てはめて、修復の種類ごとに比べた表5です。
厚み1mmの二ケイ酸リチウム(接着)では、咬合面オンレー16.9%・部分被覆冠27.3%・フルクラウン55.3%。同じ二ケイ酸リチウムでも、セルフアドヒーシブや従来型の合着で厚み1.5mmが必要な場合は、それぞれ22.6%・35.0%・65.1%に増えました。
注目は図8の比較です。薄く作れるモノリシックジルコニア(厚み0.5mm)でも、フルクラウンの削除量は43.0%。一方、二ケイ酸リチウムの部分被覆冠(厚み1mm)は27.3%(マージン4mm)・21.5%(マージン5mm)で、材料を薄くするより、マージンを上げるほうが削る量は少なくなる計算でした。
⑤なぜマージンの高さがこれほど効くのか
著者らは、マージンとCEJの距離とシャンファーの深さが削除量に最も強く影響した、と結果から述べていますが、その理由を詳しくは論じていません。ここからは筆者の読みです。マージンをCEJに近づけるほど、歯冠を一周ぐるりと削る壁の高さが伸びます。削る「帯」が縦に長くなるので、体積が大きく増えると考えられます。
形成角の影響がフルクラウンで大きく、部分被覆冠やオンレーではほとんど変わらなかったのも、同じ理屈で読めます。軸面の壁が短い修復では、傾きを変えても削る範囲がそもそも小さいからです(これも筆者の解釈で、論文が検証したものではありません)。
⑥明日の臨床へ
補足(筆者の読み):
・この研究が示したのは削る量の計算だけです。部分被覆冠やオンレーが、フルクラウンと同じくらい割れにくいか、外れにくいか、長くもつかは調べていません。「部分被覆冠のほうが成績が良い」という話ではありません。
・材料を選ぶ段階で、最小厚みと合着方法まで決めておくと、どちらが多く削るかの見当がつきます。表5では、同じ二ケイ酸リチウムでも接着(1.0mm)とセルフアドヒーシブ・従来型合着(1.5mm)で、フルクラウンが55.3%と65.1%でした。
・形成角を大きくしても削除量の増え方は小さめでしたが、著者らは収束角が従来型合着のクラウンの保持力に関わる点にも触れています。削除量だけで形成角を決めない方がよさそうです。
・著者らは考察で、診断用ワックスアップや暫間修復物から作る形成ガイドで咬合面のクリアランスを確かめ、削りすぎを避ける方法を挙げています(この研究で検証した方法ではありません)。
⑦ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
著者らの結論:この研究の範囲では、削除量に最も強く影響したのはマージンとCEJの距離、次いでシャンファーの深さだった。形成角と咬合面の削除量の影響は相対的に小さく、形成角の影響はフルクラウンで部分被覆冠より大きかった。部分被覆冠(マージンをCEJから4mmに置いた形成)は、薄く作れるモノリシックジルコニアのフルクラウンと比べても削る量がかなり少ない。ただしこれは模型1本の計算結果で、強度・保持力・長期成績は調べていない。


