1問1答 論文 歯周病

「ピエゾは直線、マグネットは楕円」——3次元で測ったら、その前提が崩れた

非外科治療

超音波スケーラーチップの3次元振動解析

磁歪式は先端が全周に動くから全面で取れる。圧電式は直線的に動くから側面でしか取れない——そう習った方は多いはずです。ところが3次元レーザー振動計で測ってみると、圧電式も磁歪式も、荷重をかけてもかけなくても、すべてが楕円を描いていました。振動の型を決めていたのは、駆動方式ではありませんでした。

論文
Three-dimensional analyses of ultrasonic scaler oscillations
著者
Lea SC, Felver B, Landini G, Walmsley AD
掲載
J Clin Periodontol. 2009;36(1):44-50
種類
in vitro(3Dスキャニングレーザー振動計・4種のチップ各3本)
PMID
19017036

「うちはマグネットだから全面で取れる」は、本当か

診療室に超音波スケーラーが2台あると、たいてい使い分けの話になります。磁歪式(マグネット式)は先端が全周に動くから、どの面を当てても取れる。圧電式(ピエゾ)は直線的に動くから、側面を当てないと取れない——。

この説明、講習でも教科書でも繰り返し出てきます。ところが、3次元で測った人がいました。

それまで:1平面でしか測っていなかった

チップの動きは以前から測られてきました。ただし、その多くはスケーラーの長軸に沿った1平面での測定です。実際のチップの動きはもっと複雑で、横方向の成分を含みます。そして歯石を弾き飛ばし、根面を傷つける可能性があるのは、まさにその横方向の振動です。

1平面で見ている限り、横の動きは見えません。「圧電式には横の動きがない」という記述は、そもそも横を測っていない測り方から生まれた可能性がありました。

今回の一手:長軸と横軸を、同時に測る

著者らは3次元スキャニングレーザー振動計を使いました。長軸方向と横方向の振動を同時に評価できる装置です。対象は圧電式のPチップ・Aチップ、磁歪式のSlimline・TFI-3——4設計を各3本ずつ。まず無荷重で測り、次にPとSlimlineについては、樹脂に包埋した実際の歯に押し当てた荷重条件(100 g・200 g)でも測っています。

同じ設計を3本ずつ用意したところが効きました。この設計のおかげで、後述する「個体差」が見えることになります。

結果:全部、楕円だった

超音波チップの振動——教科書の説明と、3次元で測った結果これまでの説明磁歪式=楕円に動く圧電式=直線的に動くだから根面の削れ方が違う機種で使い分けを決める3次元で測るとどの方式もすべて楕円荷重をかけても楕円のまま決めているのはチップの形と出力同じ型番同士でも動きが違う4種のチップ(圧電式P・A/磁歪式Slimline・TFI-3)を各3本ずつ、無荷重と荷重(100g・200g)で3Dレーザー振動計により測定(Lea 2009)

無荷重でも荷重下でも、試したすべてのチップが楕円運動を示しました。圧電式も例外ではありません。

荷重をかけると楕円は長軸方向に平たくなります(短軸が小さくなる)。それでも楕円のままです。さらに、無荷重では楕円の長軸の向きがチップの場所ごとにばらばらだったのが、先端に荷重をかけるとチップ全長にわたって向きが揃いました。先端を根面に当てるという行為は、その一点だけでなく、チップ全体の振動を変えていたことになります。

著者らの結論は明快です。振動の型は、磁歪式か圧電式かでは決まらない。決めているのは、チップの形状と出力である。

では、何が振動を変えるのか

では、何が振動の型を変えるのかチップの形細く長いチップ(Slimline・P)ほど楕円が大きい。短く太いチップ(TFI-3・A)は低出力ではほぼ直線に近い——ただしそれでも楕円出力出力を上げると振動は有意に増大(p<0.0001)。細く長いチップほど、楕円の広がり方が大きい荷重根面に当てると楕円は長軸方向へ平たくなる。ただし消えはしない。荷重の影響は出力より小さかった個体差同じ設計の3本の間でも振動が有意に違った。磁歪式のはんだ量、圧電式の締め込み具合が原因として挙げられている「機種が何か」より「どのチップを、どの出力で使っているか」が振動を決めていた(Lea 2009)

低出力では、短くて太いTFI-3(磁歪式)とAチップ(圧電式)はほぼ直線に近い動きをしました——ただし、それでも楕円です。一方、長くて細いチップ(特にSlimline)は、より大きな楕円を描きました。出力を上げると、楕円の広がりが最も大きくなったのは細く長いSlimlineとPチップ。しなりやすく、横に振れやすいからです。

そして、この研究がもうひとつ拾ったのが個体差でした。同じ設計の3本の間で、振動が有意に違ったのです。著者らは原因の候補として、磁歪式インサート内部のスタック構造に使われるはんだの量とその広がり方、圧電式ではハンドピースへの締め込みの強さを挙げています。「同じチップを使っている」は、「同じ動きをしている」を意味しません。

なお、この研究で測られた振動は高出力でも50 μmを超えることは稀でした。1990年代の先行研究が中出力で75〜119 μmと報告していたのとは、桁が違います。著者らは、その先行研究が各チップ1本を1回測っただけで(繰り返し測定の記載も標準偏差もない)「直線か楕円か」を判定していた点を指摘しています。

明日の臨床へ:機種で語るのをやめる

① 「うちは磁歪式だから」で使い方を決めない。 駆動方式は振動の型を決めていませんでした。決めているのは、いま手に持っているチップの形です。
② 細いチップ+高出力は、横に大きく振れる。 縁下用の細いチップこそ、出力を上げたときの横振れが大きい。当てる角度と力に、いっそう気を配る場面です。
③ チップは消耗品として個体で見る。 同じ型番でも動きが違います。「このチップは取れる/取れない」という現場の感覚は、気のせいではないかもしれません。
ここだけ、冷静に補助線 これはin vitroの研究です。測ったのは振動そのものであって、歯石がどれだけ取れたか・根面がどれだけ削れたかではありません。「楕円だから全面で取れる」と読み替えるのは一歩踏み込みすぎで、著者ら自身も、チップ形状が根面に与える影響は今後の研究課題だと書いています。またポケット内でチップが壁に拘束されると振動特性は変わりうるとも述べており、実際の縁下での動きはまだ測られていません。それでも「方式で決まる」という30年来の説明が、測り方を変えたら成り立たなかった——これは知っておく価値のある一本です。

今日のひとこと

振動の型を決めるのは駆動方式ではなく、チップの形と出力。機種で語るのをやめて、いま持っているチップの形と、回しているつまみを見る。

Lea SC, Felver B, Landini G, Walmsley AD. Three-dimensional analyses of ultrasonic scaler oscillations. J Clin Periodontol. 2009;36(1):44-50. PMID: 19017036
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。