超音波スケーラーチップの3次元振動解析
磁歪式は先端が全周に動くから全面で取れる。圧電式は直線的に動くから側面でしか取れない——そう習った方は多いはずです。ところが3次元レーザー振動計で測ってみると、圧電式も磁歪式も、荷重をかけてもかけなくても、すべてが楕円を描いていました。振動の型を決めていたのは、駆動方式ではありませんでした。
①「うちはマグネットだから全面で取れる」は、本当か
診療室に超音波スケーラーが2台あると、たいてい使い分けの話になります。磁歪式(マグネット式)は先端が全周に動くから、どの面を当てても取れる。圧電式(ピエゾ)は直線的に動くから、側面を当てないと取れない——。
この説明、講習でも教科書でも繰り返し出てきます。ところが、3次元で測った人がいました。
②それまで:1平面でしか測っていなかった
チップの動きは以前から測られてきました。ただし、その多くはスケーラーの長軸に沿った1平面での測定です。実際のチップの動きはもっと複雑で、横方向の成分を含みます。そして歯石を弾き飛ばし、根面を傷つける可能性があるのは、まさにその横方向の振動です。
1平面で見ている限り、横の動きは見えません。「圧電式には横の動きがない」という記述は、そもそも横を測っていない測り方から生まれた可能性がありました。
③今回の一手:長軸と横軸を、同時に測る
著者らは3次元スキャニングレーザー振動計を使いました。長軸方向と横方向の振動を同時に評価できる装置です。対象は圧電式のPチップ・Aチップ、磁歪式のSlimline・TFI-3——4設計を各3本ずつ。まず無荷重で測り、次にPとSlimlineについては、樹脂に包埋した実際の歯に押し当てた荷重条件(100 g・200 g)でも測っています。
同じ設計を3本ずつ用意したところが効きました。この設計のおかげで、後述する「個体差」が見えることになります。
④結果:全部、楕円だった
無荷重でも荷重下でも、試したすべてのチップが楕円運動を示しました。圧電式も例外ではありません。
荷重をかけると楕円は長軸方向に平たくなります(短軸が小さくなる)。それでも楕円のままです。さらに、無荷重では楕円の長軸の向きがチップの場所ごとにばらばらだったのが、先端に荷重をかけるとチップ全長にわたって向きが揃いました。先端を根面に当てるという行為は、その一点だけでなく、チップ全体の振動を変えていたことになります。
著者らの結論は明快です。振動の型は、磁歪式か圧電式かでは決まらない。決めているのは、チップの形状と出力である。
⑤では、何が振動を変えるのか
低出力では、短くて太いTFI-3(磁歪式)とAチップ(圧電式)はほぼ直線に近い動きをしました——ただし、それでも楕円です。一方、長くて細いチップ(特にSlimline)は、より大きな楕円を描きました。出力を上げると、楕円の広がりが最も大きくなったのは細く長いSlimlineとPチップ。しなりやすく、横に振れやすいからです。
そして、この研究がもうひとつ拾ったのが個体差でした。同じ設計の3本の間で、振動が有意に違ったのです。著者らは原因の候補として、磁歪式インサート内部のスタック構造に使われるはんだの量とその広がり方、圧電式ではハンドピースへの締め込みの強さを挙げています。「同じチップを使っている」は、「同じ動きをしている」を意味しません。
なお、この研究で測られた振動は高出力でも50 μmを超えることは稀でした。1990年代の先行研究が中出力で75〜119 μmと報告していたのとは、桁が違います。著者らは、その先行研究が各チップ1本を1回測っただけで(繰り返し測定の記載も標準偏差もない)「直線か楕円か」を判定していた点を指摘しています。
⑥明日の臨床へ:機種で語るのをやめる
今日のひとこと
振動の型を決めるのは駆動方式ではなく、チップの形と出力。機種で語るのをやめて、いま持っているチップの形と、回しているつまみを見る。


