1問1答 論文 歯周病

歯槽硬線が見えている部位は、しばらく再発しなかった

1問1答 論文 歯周病

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メインテナンス中のX線で、隣接部の骨頂に白い線が見える。あるいは、見えない。この所見は、これから再発する部位を言い当ててくれるのでしょうか。51人の患者の1809部位を36か月追ったこの研究の答えは、半分イエスで、半分ノーでした。白い線が見えている部位はしばらく再発しなかった——けれども見えない部位が再発するとは、まったく言えなかったのです。

論文
Utility of radiographic crestal lamina dura for predicting periodontitis disease-activity
著者
Rams TE, Listgarten MA, Slots J
掲載
Journal of Clinical Periodontology 1994;21(9):571-576
種類
前向き縦断研究。中等度〜重度の歯周炎の治療を終え、3か月ごとのメインテナンスを1年以上受けてきた成人51人を対象に、ベースラインのX線で隣接部1809部位の歯槽硬線の有無を評価し、36か月にわたり半年ごとに臨床的な再発を追跡した
PMID
7806671

骨頂の白い線は、再発を教えてくれるか

メインテナンス中の患者さんのX線を見ています。隣接部の骨頂に、細く白い線がくっきり見える部位がある。一方で、その線が途切れている部位もある。

この所見に、意味はあるのでしょうか。白い線が消えている部位は、これから壊れていくのでしょうか

この問いは長く議論されてきました。Greensteinらの横断研究では歯槽硬線と歯周状態のあいだに統計的な関連が見つからず、PolsonとGoodsonは「疾患活動性や治療の必要性の指標として歯槽硬線の連続性を用いることには、大きな注意を払うべきである」とまで書いています。

先に結論: 答えは方向によって違いました「見えている」ほうには意味があり、その部位はしばらく再発しませんでした。しかし「見えていない」ことには、ほとんど予測の力がありませんでした——見えない部位のうち実際に再発したのは約2%だけだったからです。

メインテナンス中の51人を、3年追う

対象は、中等度から重度の歯周炎の治療を終え、3か月ごとのメインテナンスを1年以上受けてきた成人51人。ベースラインで診断に使えるX線があった人たちです。

X線は長焦点平行法で撮影し、暗室のシャーカステンで3倍のルーペを使って読影歯槽硬線は、歯間中隔上に連続した不透過性の白い線として、上縁・下縁の連続性に途切れがない場合に「あり」と判定しました。途切れがあるか検出できない場合は「なし」。第二大臼歯と第三大臼歯のあいだは対象外です。

読影は1名の歯周病専門医が単独で実施し、10人分を6か月後に読み直した検者内一致はκ=0.82、別の専門医による検者間一致はκ=0.77と、いずれも優秀な水準でした。

臨床評価は2名の独立した較正済み検者が半年ごとに36か月間実施。再発の定義は、両検者がともに認めたうえで、ベースラインからプロービング深さが3mm以上増加、またはプロービング深さが2mm以上増加し、かつ咬合面の基準ステントから測った相対的アタッチメントレベルが2mm以上喪失したこと、です。

全2332の隣接部のうち1809部位(77.6%)が歯槽硬線の判定可能でした(1人あたり平均35.5部位)。内訳は歯槽硬線あり303部位、なし1506部位です。

「見えない」ことは、ほとんど何も言わない

0 33.3% 66.7% 100% 診断特性 (%) 100% 87.3% 16.9% 16.9% 0.8% 3.2% 100% 97.7% 感度 特異度 陽性的中率 陰性的中率 「歯槽硬線が見えないこと」を歯周炎の再発の予測因子として評価した場合。淡い棒=36か月時点。感度と陰性的中率は高いが、特異度と陽性的中率は極端に低い=偽陽性が非常に多い
「歯槽硬線が見えないこと」を再発の予測因子としたときの成績。感度は高いのに、特異度と陽性的中率が極端に低い

36か月のあいだに、23人(45.1%)・計64部位で再発が起きました。1人で7部位が再発した患者が1人、4〜6部位が4人、2〜3部位が9人、1部位のみが9人です。

ここで「歯槽硬線が見えないこと」を再発の予測因子として評価すると、こうなります。

  • 感度87〜100%(再発した部位のほぼすべてで、歯槽硬線は見えていなかった)
  • 特異度16.9%
  • 陽性的中率0.8〜3.2%
  • 陰性的中率97.7〜100%

感度の高さだけを見ると有望に思えます。しかし陽性的中率0.8〜3.2%という数字が現実を突きつけます。歯槽硬線が見えない部位は1506もあり、そのうち実際に再発したのは約2%だけだったのです。

著者らの言葉は率直です。「歯槽硬線の欠如と将来の歯周炎の進行のあいだに、確かな関係は見出されなかった」。24か月までに再発したすべての部位でベースラインの歯槽硬線が欠如していたのは事実だが、それらの疾患活動性部位は、歯槽硬線が欠如していた全部位の約2%を占めるにすぎない——つまり偽陽性が大量に出る、と。

「見えている」ほうには、意味があった

0 4 8 12 臨床的安定のオッズ比(歯槽硬線が見える部位) 5.1 8.4 10.9 2.3 1.8 1.4 6か月 12か月 18か月 24か月 30か月 36か月 歯槽硬線が見える部位が臨床的に安定しているオッズ比。18か月をピークに、24か月以降は急速に小さくなる。36か月全体のまとめのオッズ比は2.6(95%CI 1.5-4.5、p=0.0004)。本文の件数から計算すると36か月時点の再発率は 歯槽硬線あり2.3%(7/303)vs なし3.2%(48/1506)=リスク比 約0.7
歯槽硬線が見える部位が臨床的に安定しているオッズ比。18か月をピークに、24か月以降は急速に小さくなる

逆向きに見ると、話が変わります。

ベースラインで歯槽硬線が保たれていた部位は、24か月まで歯周炎の再発を示さなかった——著者らはそう述べています(陽性的中率100%)。

オッズ比で見ると、歯槽硬線の存在は臨床的な歯周組織の安定と正の関連を示しました。36か月全体のまとめのオッズ比は2.6(95%CI 1.5-4.5、p=0.0004)。逆に再発とは負の関連で、まとめのオッズ比は0.4(95%CI 0.2-0.7、p=0.0004)です。

ただし時間とともに力は落ちます。部位単位のオッズ比は6か月5.1 → 12か月8.4 → 18か月10.9とピークに達したあと、24か月2.3 → 30か月1.8 → 36か月1.4と急速に小さくなりました。

数字の読み方: オッズ比は「比」であって「何倍なりやすいか」ではありません。本文の件数から計算すると、36か月時点の再発率は 歯槽硬線あり2.3%(7/303)・なし3.2%(48/1506)=リスク比 約0.7オッズ比2.6という数字から受ける印象より、実際の差はずっと小さいことが分かります。

撮り方によって見え方が変わる

もうひとつ、読影上の重要な所見があります。

デンタル(根尖部)とバイトウィングの一致度はκ=0.56と、中程度にとどまりました。同時に判定できた984部位のうち、バイトウィングでは169部位、デンタルでは142部位に歯槽硬線が検出されています。しかもバイトウィングでは見えるがデンタルでは見えない部位が70、その逆が43ありました。

著者らはここから実務的な提案をしています。「臨床的な歯周組織の安定を予測するために歯槽硬線を検出したいのであれば、バイトウィングとデンタルの両方を解析するのが賢明であると思われる」

読影者間のばらつきも課題として残されました。この研究では読影は1名が行い、一部を別の1名が確認しただけなので、複数の読影者のあいだでどれだけばらつくかは、さらなる研究が必要だと著者らは書いています。加えてフィルムの位置や角度のばらつきによって、実際には存在する歯槽硬線が写らないこともある点も指摘されています。

明日の臨床へ

  • 歯槽硬線が見えている部位は、「しばらく大丈夫そう」と読んでよい。この研究では24か月まで再発ゼロでした
  • 見えないからといって、危ないとは言えない。陽性的中率は0.8〜3.2%。ここを取り違えると、必要のない不安と処置を生みます
  • 安心材料としての有効期限は2年程度。オッズ比は18か月でピークを打ち、その後急速に落ちました。定期的に撮り直す根拠になります
  • デンタルとバイトウィングの両方を見る。一致度はκ=0.56。片方だけでは見落とします
  • 再発の好発部位も知っておく。この研究では上顎第二大臼歯が最多で、次いで上顎第二小臼歯と下顎第二大臼歯でした
  • X線は臨床所見の代わりにはならない。著者らも、X線は多くの場合プロービング深さとアタッチメントレベルから得られる情報を追認するにとどまる、と述べています

ここだけ、冷静に補助線

対象はすでに治療を終え、3か月ごとのメインテナンスを1年以上受けてきた51人です。未治療の歯周炎患者や、管理が不十分な集団で同じ数字が出るとは限りません。再発率そのものが低い集団であることが、陽性的中率の低さに直結しています。読影は1名の専門医が担当し、複数読影者間のばらつきは検証されていません。また原著の抄録と本文は「歯槽硬線が保たれていた部位は24か月まで再発を示さなかった」と述べていますが、Table 2 では24か月の時点で3部位が再発として計上されており、Table 3 の陽性的中率も24か月では99.0%に下がっています(0部位で一致するのは18か月まで)。数字を引用するときは、この食い違いを承知しておきたいところです。それでも、「見える」と「見えない」で予測の力がまったく違うという構造を、1809部位・36か月というスケールで示した意義は大きい。X線の白い線を、安心材料としては使い、警戒材料としては使わない——そういう読み分けを教えてくれる1本です。

今日のひとこと

51人・隣接部1809部位(歯槽硬線あり303・なし1506)を36か月追跡し、23人(45.1%)・64部位で再発を認めた。「歯槽硬線が見えない」ことを再発の予測因子とすると、感度は87〜100%と高いが、特異度は17%、陽性的中率は0.8〜3.2%と極端に低い——見えない部位の大半は再発しないため、偽陽性が大量に出る。一方ベースラインで歯槽硬線が保たれていた部位は、24か月まで再発を示さなかった(陽性的中率100%)と著者らは述べている。歯槽硬線の存在は臨床的な歯周組織の安定と正の関連(まとめのオッズ比 2.6、95%CI 1.5-4.5、p=0.0004)、再発と負の関連(まとめのオッズ比 0.4、95%CI 0.2-0.7、p=0.0004)を示した。ただし36か月時点の再発率は歯槽硬線あり2.3%(7/303)・なし3.2%(48/1506)でリスク比は約0.7(本文の件数から計算)であり、オッズ比の数字ほど大きな差ではない。著者らは「歯槽硬線が見えない場合、将来の疾患活動性のリスクについて何も述べることはできない」と結論している。

出典:Rams TE, Listgarten MA, Slots J. Utility of radiographic crestal lamina dura for predicting periodontitis disease-activity. J Clin Periodontol 1994;21(9):571-576. PMID: 7806671
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。