1問1答 論文 エンド

BCシーラーで詰めるとき、コーンのテーパーは形成に合わせる?——抜去歯の実験室研究で、35号・テーパー.04 に形成した根管に同じ .04 のコーンを入れると、象牙細管にシーラーが入り込んだ面積と割合が他の2群より大きく、シーラーだけで詰めた根は溶剤なしの再治療用ファイルで作業長に届かなかった(Eymirli 2019)

1問1答 論文 エンド

エンド|バイオセラミック系の根管シーラー(EndoSequence BC Sealer)を、シーラーだけ・.02のコーンと・.04のコーンと、の3通りで詰め、象牙細管への入り込みと、再根管治療で作業長に届くまでの時間を比べた抜去歯の実験室研究(Eymirliら 2019・Journal of Endodontics)

BCシーラーで詰めるとき、コーンは形成したファイルに合わせるべきか。シーラーだけで詰めてもよいのか。Eymirliらは2019年、抜去したヒトの下顎切歯を35号・テーパー.04 に形成し、BC Sealer だけ、BC Sealer+.02 のコーン、BC Sealer+.04 のコーンの3通りで詰めて比べました。根の中央の高さの断面で、.04 のコーンの群は象牙細管にシーラーが入り込んだ面積(平均12.72 mm²)と、根管壁の全周に対する入り込みの割合(平均100%)が他の2群より有意に大きく、根管壁からいちばん深く入り込んだ距離には有意差を検出しませんでした。2週間後に溶剤なしで ProTaper の再治療用ファイルを使った再根管治療では、作業長に届くまでの平均は .02 のコーンの群が45.16秒、.04 のコーンの群が53.08秒で(2群のあいだに有意差は検出されず)、シーラーだけの群は作業長に届きませんでした。各群10本の抜去歯の実験で、患者さんの歯での治りを調べたものではありません。

論文
Dentinal Tubule Penetration and Retreatability of a Calcium Silicate–based Sealer Tested in Bulk or with Different Main Core Material
著者
Ayhan Eymirli, Derya Deniz Sungur, Ozgur Uyanik, Nuhan Purali, Emre Nagas, Zafer C. Cehreli(トルコ・ハジェテペ大学 ほか)
掲載
Journal of Endodontics 2019;45(8):1036-1040
種類
実験室の研究(抜去歯)。抜去したヒトの下顎切歯60本(根の長さ16mm)を MTwo で35号・テーパー.04 まで形成し、無作為に30本ずつ2つの実験に分け、それぞれ3群(各10本)に。充填は EndoSequence BC Sealer だけ/+35号 .02 の BC Point/+35号 .04 の BC Point。37℃・湿度100%で2週間。入り込み:ローダミンBで色を付けたシーラーを、根の中央の高さで切った断面で共焦点レーザー顕微鏡により測定(一元配置分散分析と Games-Howell 検定)。再治療:溶剤なしで ProTaper の再治療用ファイル D1〜D3(毎分500回転)を使い、作業長に届くまでの時間を記録(Kruskal-Wallis 検定)
資金・利益相反
資金の記載なし。著者らは利益相反なしと記載
PMID
31230709

①BCシーラーで詰めるとき、コーンのテーパーは合わせる?

バイオセラミック系のシーラーとシングルコーンでの根管充填が増えてきました。「シーラーが主役なのだから、コーンは細めでもいい」「いっそシーラーだけで詰めても同じでは」と考えたことはないでしょうか。

この問いに、抜去歯の実験で答えようとしたのが、Eymirliらが2019年に Journal of Endodontics に報告した研究です。35号・テーパー.04 に形成した根管を、EndoSequence BC Sealer(以下 BC Sealer)だけ、BC Sealer+テーパー.02 のコーン、BC Sealer+テーパー.04 のコーンの3通りで詰め、象牙細管へのシーラーの入り込みと、再根管治療で作業長に届くまでの時間を比べました。コーンは同じ会社の BC Point(バイオセラミックの粒子をしみ込ませ、表面を覆ったガッタパーチャ)です。

結論を先に書きます。
・.04 のコーン(形成と同じテーパー)の群は、象牙細管にシーラーが入り込んだ面積(平均12.72 mm²)と、根管壁の全周に対する入り込みの割合(平均100%)が、シーラーだけの群・.02 のコーンの群より有意に大きかった
・面積と割合は、シーラーだけの群と .02 のコーンの群のあいだに有意差を検出しなかった
・根管壁からいちばん深く入り込んだ距離の群ごとの平均(シーラーだけ1.89 mm、.02 のコーン1.85 mm、.04 のコーン2.06 mm)は、3群のあいだに有意差を検出しなかった
・再根管治療(2週間後・溶剤なし・ProTaper の再治療用ファイル)では、作業長に届くまでの平均は .02 のコーンの群が45.16秒、.04 のコーンの群が53.08秒で、2群のあいだに有意差は検出されなかった。シーラーだけの群は作業長に届かなかった
・抜去した下顎切歯(各群10本)の実験室の研究で、患者さんの歯での治りを調べたものではない

②なぜこの比較が必要だったか

BC Sealer は、注入して使う練和済みのカルシウムシリケート系シーラーです。原著によれば、製造者は「シーラー単独の充填材としても、専用のコーン(BC Point)と組み合わせても使える」としています。

シーラーが象牙細管に入り込むことは、根管の壁へのなじみをよくし、残った細菌の再増殖を防ぐ働きも期待できる性質とされています。一方で、カルシウムシリケート系のシーラーは、再根管治療のときに取り除きにくいことが弱点として挙げられてきました。

製造者の説明とは別に、BC Sealer をシーラーだけで使ったときと、テーパーの違うコーンと組み合わせたときで、細管への入り込みと取り除きやすさがどう変わるかは、報告が無かったと著者らは書いています。

③何をどう調べたか

・歯:抜去したヒトの下顎切歯60本(まっすぐな単根管)。歯冠を切り落として根の長さを16mmにそろえた
・形成:MTwo で35号・テーパー.04 まで。洗浄は2%の次亜塩素酸ナトリウム、最後に17%の EDTA と生理食塩水
・群分け:無作為に30本ずつ「入り込みの実験」と「再治療の実験」に分け、それぞれを3群(各10本)にした
・充填:①BC Sealer だけ ②BC Sealer+35号・テーパー.02 の BC Point ③BC Sealer+35号・テーパー.04 の BC Point。シーラーを根尖から見えるまで注入してからコーンを入れ、余りは熱した器具で切った。37℃・湿度100%で2週間おいた

入り込みは、シーラーにローダミンB(蛍光の色素)を混ぜて、根の中央の高さで厚さ1mmの輪切りを作り、共焦点レーザー顕微鏡で測りました。測ったのは3つです。根管の周のうちシーラーが細管に入り込んでいた部分の割合、根管の壁からいちばん深く入り込んだ距離、入り込んだ範囲の面積(入り込んだ範囲の全体から根管の部分を引いたもの)。

再治療は、2週間おいたあと、溶剤を使わずに ProTaper の再治療用ファイル D1・D2・D3 を毎分500回転で使い、作業長に届くまでの時間を記録しました。統計は、入り込みが一元配置分散分析と Games-Howell 検定、時間が Kruskal-Wallis 検定です(有意水準5%)。

④結果:形成と同じテーパーのコーンで、入り込みの面積と割合が大きかった

0 5 10 15 シーラーが入り込んだ面積の平均(mm²) 7.83 8.02 12.72 シーラーだけ シーラー+.02のコーン シーラー+.04のコーン 抜去歯(下顎切歯)の実験 各群10本 根の中央の高さの断面 標準偏差 3.82・3.36・1.73
図1:象牙細管にシーラーが入り込んだ面積の平均(原著の表1。3群の全て)。.04 のコーンの群が他の2群より有意に大きく、シーラーだけと .02 のコーンのあいだには有意差を検出しなかった。

入り込んだ面積の平均は、シーラーだけ 7.83 mm²、.02 のコーン 8.02 mm²、.04 のコーン 12.72 mm²。根管壁の全周のうち象牙細管にシーラーが入り込んでいた割合の平均は、それぞれ 92.15%、93.8%、100%(.04 のコーンの群は標準偏差0で、測った全ての試料で全周)でした。どちらも .04 のコーンの群だけが有意に大きく、残りの2群のあいだには有意差を検出しませんでした。

根管壁からいちばん深く入り込んだ距離の平均は、1.89 mm、1.85 mm、2.06 mm で、3群のあいだに有意差を検出しませんでした。広さ(面積・割合)には差が出て、深さには差を検出しなかった、という結果です。

図2:原著の表1(入り込み)と表2(再治療の時間)の全ての値(平均 ± 標準偏差) 測ったもの シーラーだけ +.02のコーン +.04のコーン 根管壁の全周に対する入り込みの割合(%) 92.15 ± 11.12 93.8 ± 13.60 100 ± 0 根管壁からいちばん深い距離(mm) 1.89 ± 0.34 1.85 ± 0.50 2.06 ± 0.21 入り込んだ面積(mm²) 7.83 ± 3.82 8.02 ± 3.36 12.72 ± 1.73 作業長に届くまでの時間(秒) 届かなかった 45.16 ± 39.11 53.08 ± 23.54 抜去したヒトの下顎切歯60本。根管は35号・テーパー.04まで形成。 上の3行と最下行は、別々の30本(各群10本)で調べた。 シーラーは EndoSequence BC Sealer。 コーンは同じ会社の BC Point(35号で、テーパーが .02 と .04 の2種)。 シーラーを根尖から見えるまで注入してからコーンを入れ、余りは熱した器具で切った。 上の3行:根の中央の高さで切った断面を、共焦点レーザー顕微鏡で測定。 割合=根管壁の全周のうち、象牙細管にシーラーが入り込んでいた長さの割合。 距離=根管壁から、いちばん深く入り込んだ所までの距離。 割合と面積は、.04 のコーンの群が他の2群より有意に大きかった。 距離は、3群のあいだに有意差を検出しなかった。 最下行:2週間おいたあと、溶剤なしで ProTaper の再治療用ファイル(D1〜D3)を使った。 2つのコーンの群のあいだに有意差を検出しなかった。シーラーだけの群は作業長に届かなかった。 除去した後に根管に残った材料の量は測っていない。 実験室の研究で、患者さんの歯で調べた結果ではない。
図2:原著の表1・表2の全ての値。最下行の再根管治療は、入り込みの実験とは別の30本で調べた。

再根管治療では、.02 のコーンの群が平均45.16秒、.04 のコーンの群が平均53.08秒で作業長に届き、2群のあいだに有意差は検出されませんでした(.02 の群は標準偏差39.11秒とばらつきが大きい)。シーラーだけの群は、作業長に届きませんでした。原著の表2では、この群の時間は「—」になっています。

⑤結果の読み方

著者らの結論はこうです。形成した根管の形に合うコーンが生む圧によって、BC Sealer の象牙細管への入り込みが高まる。シーラーにコーンを組み合わせることで、再根管治療で作業長まで届く。なお、この研究で .04 のコーンの群に差が出たのは、入り込んだ面積と根管壁の全周に対する割合で、根管壁からいちばん深い距離には有意差を検出していません。

ただし、「コーンの圧でシーラーが押し込まれた」という説明は、著者らの推測(考察では presumably と書いています)で、この研究で圧を測ったわけではありません。また著者らは、合ったコーンでシーラーの量を減らせれば、シーラーの収縮や溶解による隙間を減らせるかもしれない、とも書いていますが、これも確かめたことではありません。

シーラーだけの群が作業長に届かなかったことについて、著者らは、超音波などほかの除去の方法は試していないと断ったうえで、硬化したシーラーを臨床で許容できる時間で取り除くのは難しいだろう、と述べています。

⑥明日の臨床へ

ここからは筆者の読みです。原著の主張ではありません。

BC Sealer でシングルコーンの充填をするなら、形成した最終ファイルと同じテーパーのコーンを選ぶ。この研究は、その選び方を支える材料の1つになります(この研究では、コーンの号数はどの群も形成と同じ35号で、変えたのはテーパーだけです)。細いテーパーのコーンを入れた群は、シーラーだけの群と入り込みの面積・割合に有意差を検出しませんでした。

そしてもう1つ。シーラーだけで根管を満たす詰め方は、再治療のときに作業長まで戻れない可能性がある、という結果です。この実験では、2週間おいてから溶剤を使わずに再治療用のニッケルチタンファイル(ProTaper)を使うと、シーラーだけの群は作業長に届きませんでした。将来の再治療を考えると、コーンを入れておく意味は大きそうです。

ただ、ここで比べたのは入り込みの面積・割合・深さと、作業長に届くまでの時間です。入り込みの面積や割合が大きいと治りがよいのか、作業長に届いたあとに材料がどれだけ残ったのかは、この研究では調べていません。

ここだけ、冷静に補助線同じシーラーで「コーンなし・細いコーン・合ったコーン」を並べた、臨床の疑問に近い比べ方の実験です。そのうえで、読むときの補助線をいくつか。
(1)抜去した下顎切歯(まっすぐな単根管)を各群10本で調べた実験室の研究です。湾曲した根管や大臼歯、患者さんの歯での治りは調べていません。
(2)入り込みを測ったのは、根の中央の高さの断面だけです。根尖の近くは調べていません。各根から厚さ1mmの輪切りを2枚作ったとありますが、2枚をどう集計したかは書かれていません。
(3)再治療で測ったのは「作業長に届くまでの時間」です。原著の表2の題は「完全に取り除くのに要した時間」ですが、方法の節で記録したのは作業長に届くまでの時間で、取り除いた後に根管に残った材料の量は測っていません。また、溶剤も超音波も使わず、ファイルは ProTaper の再治療用の1種類だけです。
(4)コーンの圧でシーラーが押し込まれたという説明は、著者らの推測です。圧は測っていません。
(5)シーラーは EndoSequence BC Sealer、コーンは同じ会社の BC Point の1つの組み合わせだけです。ほかのシーラーやコーンにそのまま当てはまるかは分かりません。著者らは利益相反は無いとしています。資金の記載はありません。
コーンの選び方と、シーラーだけで詰めることのリスクを、同じ実験の中で見せてくれた1本、という位置づけで読むのがよさそうです。

今日のひとこと

BCシーラーで詰めるとき、形成と同じテーパーのコーンを入れた群で、象牙細管にシーラーが入り込んだ面積と、根管壁の全周に対する入り込みの割合が、他の2群より大きかった(根管壁からいちばん深い距離には有意差を検出せず)。そして、シーラーだけで詰めた根は、2週間後に溶剤なしで再治療用のファイル(ProTaper)を使うと作業長に届かなかった。ただし、抜去した下顎切歯を各群10本で調べた実験室の研究で、測ったのは根の中央の断面1か所と、作業長に届くまでの時間です。入り込みの差が治りに結びつくのか、取り除いた後に材料がどれだけ残ったのかは調べていません。シーラーだけで詰めることのリスクと、コーンの選び方を考える材料として読みたい1本です。

Eymirli A, Sungur DD, Uyanik O, Purali N, Nagas E, Cehreli ZC. Dentinal tubule penetration and retreatability of a calcium silicate-based sealer tested in bulk or with different main core material. J Endod. 2019;45(8):1036-1040. doi: 10.1016/j.joen.2019.04.010. PMID: 31230709
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。