1問1答 論文 歯周病

全顎1時間の超音波は、4回に分けたSRPに並ぶか

1問1答 論文 歯周病

ペリオ|Phase1 初期治療

初期治療は4回に分けて、1回1時間。そう組んでいる医院は多いはずです。では全顎を1時間の超音波デブライドメント1回で済ませたら、結果はどれだけ落ちるのか。2005年、Wennströmらは41名を無作為に分け、6か月追いました。落ちなかった、というのが答えです。

論文
Full-mouth ultrasonic debridement versus quadrant scaling and root planing as an initial approach in the treatment of chronic periodontitis
著者
Wennström JL, Tomasi C, Bertelle A, Dellasega E
掲載
Journal of Clinical Periodontology 2005;32(8):851-859
種類
無作為化比較試験(2施設・単盲検・41名/全顎超音波デブライドメント1時間1回 20名 vs 4分割SRP 4回 21名・喫煙で層別・6か月)
PMID
15998268

4回に分ける、その4回は必要か

初期治療の枠は、たいてい「4分割・1回1時間・週1回」です。理由を聞かれれば、丁寧に触るためだと答えます。ただ、患者側から見ると4回の来院と4回の麻酔です。

ここで前提を一つ崩しておきます。ルートプレーニングという言葉には「汚染されたセメント質を削り取る」という意図が含まれていました。内毒素がセメント質の内部に浸透しているという概念が根拠でした。ところがその後の実験で、内毒素はセメント質表面に緩く付着しているだけで内部には浸透していないことが示されていますつまり歯質を意図的に削ることは、歯周組織の治癒の前提条件ではない。そうなると器具は「バイオフィルムと歯石を落とせて、歯質の削除は最小」であるほうが望ましい——超音波が有利な土俵です。

そこでWennströmらは、全顎を1時間の超音波デブライドメント1回で終える方法(Fm-UD)と、従来の4分割SRP(Q-SRP)を正面から比べました。

先に結論: 3か月後のポケット深さ減少は両群とも1.8mm、アタッチメント獲得は1.3mm対1.2mmで差なしPPD 4mm以下に閉じた部位は58%対66%で、これも有意差なし違ったのは時間で、1ポケットを閉じるのに3.3分対8.8分

1時間と、4時間

対象は中等度進行の慢性歯周炎の成人42名(スウェーデン・イェーテボリ大学とイタリア・トレントの開業医の2施設で各21名)組み入れは25〜75歳、18歯以上、PPD 5mm以上かつBOP陽性の歯が8歯以上(うち2歯は7mm以上、別の2歯は6mm以上)直近12か月に縁下インスツルメンテーションを受けた人は除外しています。1名がベースライン前に脱落し、41名(平均49.8歳)が解析対象。喫煙者20名

喫煙で層別したうえで無作為割り付けし、割り付けは研究に関わらない第三者が行い、封筒で衛生士に渡すという隠蔽をしています。計測は治療内容を知らされていない歯周病専門医1名

  • Fm-UD群:ベースライン当日に1時間の全顎縁下デブライドメントピエゾ式超音波(EMS Piezon Master 400、A+PerioSlimチップ、注水、出力75%)。1歯あたり約2分の計算です
  • Q-SRP群1週間隔で4回、手用キュレットによる分割SRP。1歯あたり約6.5分

3か月後、両群とも5mm以上残った部位を再治療します(このときは時間制限なし)。Fm-UD群は超音波で、Q-SRP群は手用で。評価はベースライン・3か月・6か月です。

ベースラインのPPDは6.1〜6.2mm、5mm以上の対象部位は平均35〜36か所、うち29〜33%が7mm以上ブラッシング指導はスクリーニング時に全員へ行い、1か月・3か月の来院でチェック——セルフケアの水準を揃えたうえで縁下処置の差だけを見る設計です。

治り方は、ほぼ同じだった

0 30% 60% 90% PPD 4mm以下に閉じた部位(%) 66% 58% 77% 74% 50% 47% 3か月・全部位 6か月・全部位 6か月・7mm以上 pocket closure=PPD 4mm以下。どの時点でも群間差は有意でない。6か月時点でも、もともと7mm以上だった部位の約半分は閉じていない
PPD 4mm以下に閉じた部位の割合。3か月でも6か月でも、群間差は有意でない

3か月後のポケット深さ減少は、両群とも1.8mmアタッチメント獲得はFm-UD 1.3mm、Q-SRP 1.2mm全顎BOPは74%→29%(Fm-UD)、80%→32%(Q-SRP)と、どちらも約60%の減少です。

pocket closure(PPD 4mm以下)は58%(Fm-UD)対66%(Q-SRP)で有意差なしただし7mm以上の部位に限ると25%対36%と、Q-SRPが有利な傾向はありました。

3か月時点で残った部位を再治療すると、6か月でさらに0.4mm減り、アタッチメントは0.3mm増えます再治療した部位だけで見ると、超音波1.0mm・手用0.8mmの減少、アタッチメント獲得は0.7mm・0.6mm閉鎖率は74%対77%まで上がりましたここでも群間差はありません

初期の深さ別に見ても同じです。6か月時点のPPD減少は、5〜6mmだった部位で1.8mm、7mm以上だった部位で2.9mm——両群でまったく同じ値でした。

差がついたのは、時間と負担

0 5分 10分 15分 1ポケットを閉じるのに要した時間(分) 8.8分 3.3分 12.6分 11.5分 初回治療 3か月後の再治療 初回治療の差は有意(p<0.01)。再治療では差が消える(時間制限を外し、術者の判断で終わりを決めたため)。初回の器具操作時間そのものは55分対168分だった
1ポケットを閉じるのに要した器具操作時間。初回では2.7倍の差がつく

初回の器具操作時間は、Fm-UD 55±6分に対しQ-SRP 168±45分閉じたポケット1つあたりに換算すると3.3分対8.8分(p<0.01)です。

負担の差も出ました。初回の麻酔カートリッジは1.4本対4.2本治療の不快感はVAS中央値2.0(0〜5)で両群同じでしたが、5日以上続く根面知覚過敏を訴えたのはFm-UD 1名(5%)に対しQ-SRP 7名(33%)歯周膿瘍などの急性症状はどちらの群にも起きていません

ただし再治療の局面では効率の差が消えます1ポケットあたり11.5分(超音波)対12.6分(手用)で有意差なし残った部位1か所への器具操作時間は3.4分対3.8分ですが、閉じる確率が下がるため、1つ閉じるのに要する時間は初回の3〜4倍に跳ね上がるのです。

なぜ1時間で足りたのか。著者らは「器具操作後の細菌量には閾値があり、それを下回れば宿主が残りの感染に対処できる」という考え方(Cobb 2002)を引きます。実際、SRPで根面を完全に無菌・無歯石にすることは達成できないと多くの研究が示している加えて、ピエゾ式超音波は手用より短時間でデブライドメントできるという in vitro データと、プローブ様の細いチップが深いポケットへの到達性を高めるという報告も背景にあります。

明日の臨床へ

第一に、初期治療の入口としては全顎1回でよい。少なくともこの試験の患者層(中等度進行・PPD 5mm以上が35か所前後)では、3か月後の治り方に差はありませんでした。来院回数が1/4、チェアタイムが1/3、麻酔が1/3という違いは、患者にとっても医院の枠にとっても大きい。

第二に、「1回で終わり」ではなく「1回+再評価+再治療」で組む3か月時点で約40%の部位は閉じていません。この試験の良さは、そこを放置せず再治療まで設計に入れている点です。初回で全体を素早く下げ、残った部位に時間を集中させる——これがこの論文の実装形です。

第三に、7mm以上には別の手を考える6か月時点でも、もともと7mm以上だった部位の約50%は4mm以下に届いていません著者ら自身が、繰り返しの非外科処置の効果は限定的であり、外科的デブライドメントや局所抗菌療法を含めた選択を検討すべきだと書いています。同じ部位を非外科で3周も4周もするより、そこで方針を変える判断のほうが患者の利益になります。

ここだけ、冷静に補助線。各群20名前後の試験で、追跡は6か月。長期の安定までは見ていません。また試験費用の一部は超音波機器メーカー(Electro Medical Systems)から出ています——結論の方向と資金源が一致している点は、頭の隅に置いておくべきです。もっとも、主要評価項目は「差がない」であって機器の優越性ではなく、割り付けの隠蔽と検査者の盲検化はきちんと行われています。全顎を1日で終える利点についても、著者らは肯定的なQuirynenらの報告と、否定的なApatzidou & Kinane(2004)の両方を並べて、断定を避けています。誠実な書き方です。

今日のひとこと

中等度進行の慢性歯周炎41名を、全顎超音波デブライドメント1時間1回(Fm-UD)と、1週間隔4回の分割SRP(Q-SRP)に無作為割り付けした2施設RCT3か月後のポケット深さ減少は両群とも1.8mm、アタッチメント獲得は1.3mm対1.2mmで有意差なしPPD 4mm以下に閉じた部位(pocket closure)は58%対66%で有意差なし3か月時点で5mm以上残った部位を再治療すると、6か月でさらに0.4mm減り、閉鎖率は74%対77%へ決定的な差は時間で、初回の器具操作は55分対168分。1ポケットを閉じるのに要した時間は3.3分対8.8分(p<0.01)麻酔カートリッジは1.4本対4.2本、5日以上続く根面知覚過敏は5%対33%ただし3か月時点で約40%の部位は閉じておらず、6か月時点でも7mm以上だった部位の約50%は未達成のままだった

出典:Wennström JL, Tomasi C, Bertelle A, Dellasega E. Full-mouth ultrasonic debridement versus quadrant scaling and root planing as an initial approach in the treatment of chronic periodontitis. J Clin Periodontol 2005;32(8):851-859. PMID: 15998268
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。