ペリオ|Phase2 歯周外科
外科か非外科か。この問いに一つの答えを出そうとすると、必ず矛盾する研究が出てきます。2015年、Mailoaらは2年以上追いかけた8つの研究を集め、術前のポケットの深さで3つに分けて解析し直しました。すると、浅い部位と深い部位で答えが正反対になりました。
①同じ問いに、違う答えが返ってくる
歯周治療で、外科と非外科のどちらを選ぶか。この問いには長い議論の蓄積があるのに、研究ごとに答えが違います。
2002年の系統的レビューでは、浅いポケット(1〜3mm)でポケット減少に差はなく、中等度から深いポケットでは外科のほうがよく減るとされました。ところが同じレビューは「長期では外科と非外科は同等で、どちらも付着の喪失を防ぐ」とも結論しています。その後の縦断研究では、中等度(4〜6mm)と深い(7mm以上)ポケットで外科が優るという報告がある一方、ポケット減少は同等だったという報告も、非外科のほうが付着の喪失が少なかったという報告もあります。
短期(1年以内)の研究に絞ると、また違う絵になります。中等度のポケットでは、外科のほうがポケットはよく減るが、非外科のほうが付着はよく獲得できる。浅いポケットでは、外科でも非外科でも付着を失う。そして2年以上の追跡になると、結果はさらにばらつきます。
②深さで3つに分けて、数え直す
4つのデータベースを1970年1月から2014年9月まで検索し、2641件から8本を選びました(2名の査読者でκ=0.93)。条件は「慢性歯周炎の10名以上」「外科と非外科を比較した前向き比較試験」「2年以上の追跡」「ポケット深さと付着レベルの変化を報告」。再生療法を扱った研究は除外されています。
8本のうち6本がスプリットマウス設計のRCT、1本が群分けのRCT、1本が準実験。追跡は24か月から156か月(13年)まで。外科の内訳は改良ウィドマンフラップ7本、骨整形手術3本、歯肉弁剥離掻爬2本、縁下掻爬1本で、非外科はすべてSRP。全患者が3〜6か月ごとのメインテナンスを受けています。
そして、この研究の肝は層別解析です。術前のポケット深さで「浅い1〜3mm」「中等度4〜6mm」「深い7mm以上」の3つに分け、それぞれで外科と非外科を比べました。主要評価項目は付着レベルの獲得、副次項目はポケット深さの減少で、ランダム効果モデルで統合し、部位を解析単位としています。
③浅い部位と深い部位で、答えが逆になる
浅い部位(1〜3mm)では、どの治療でも付着レベルを失いました。SRPで23.2%(10.6〜43.5%)、改良ウィドマンフラップで39.4%(22.9〜58.9%)、骨整形手術で61.39%。ポケットについては、SRPで平均2.5%・フラップで3.3%「深くなり」、骨整形手術だけが6.3%減少しています。
メタ解析でも同じ向きです。SRPは骨整形手術より0.30mm、フラップ手術より0.22mm、付着の喪失が少ない(いずれもp<0.05)。ポケット減少では骨整形手術がSRPより0.02mm優りますが、この差の臨床的な意味は限られます。
中等度(4〜6mm)では、ポケットの減少はSRP 18.7%・フラップ25.4%・骨整形30.8%。メタ解析では、フラップ手術がSRPより0.35mm多く減少(p<0.05)しています。ところが付着の獲得は逆で、SRPが8.4%、フラップが6.5%、骨整形が5.22%。統合すると、SRPはフラップより0.29mm、骨整形より0.34mm、付着で有利(いずれもp<0.05)でした。
深い部位(7mm以上)では、外科の優位がはっきりします。ポケットの減少はSRP 21.6%・フラップ33.1%・骨整形42.8%・歯肉弁剥離掻爬41.8%。メタ解析で、骨整形手術はSRPより0.83mm多く減少(95%CI 0.10〜1.57mm、p<0.05)。フラップ手術とSRPのあいだには有意差がありませんでした。付着については、骨整形手術とSRPで差がなく、フラップ手術(0.38mm)と歯肉弁剥離掻爬(0.60mm)ではSRPのほうが喪失が少ないという結果です。
④「浅くなった」と「戻った」は別のこと
この層別解析が示しているのは、ポケットの減少と付着の獲得が、いつも同じ方向を向くわけではないということです。
浅い部位で付着を失う理由について、著者らはこう説明しています。介入そのものによる結合組織の喪失が、術後の付着レベルの低下として測定される。そしてその喪失は、メインテナンス期に少しずつ続くこともある。もともと3mmしかないポケットに器具を入れ、まして弁を挙上して骨を削れば、得るものより失うもののほうが大きくなる——数字はそう語っています。
もうひとつ、SRP後の「付着獲得」の解釈にも注意が要ります。SRPで炎症が消退すると結合組織が再構築され、プローブが結合組織に入りにくくなります。その結果として測定値は改善しますが、これは「結合組織性付着の獲得」ではなく「炎症の消退による歯肉の質の変化」だと著者らは注意を促しています。
深い部位で骨整形手術が優る理由も整理されています。骨整形を伴わないフラップ手術では、5年後にポケットが術前の値に戻ったのに対し、骨整形手術では安定していたという報告があります。歯間のクレーターが除去され、スキャロップした骨形態が得られることで、軟組織のリバウンドが防がれるという機序です。
⑤明日の臨床へ
1つ目。4〜6mmでは、まず非外科を選ぶ。 著者らの臨床的示唆そのものです——「初期の中等度ポケット(4〜6mm)では、付着の喪失が少ないSRPのほうが好ましい」。ポケットの減少だけを見て外科を選ぶと、付着を失う。
2つ目。7mm以上で外科を選ぶなら、骨整形を検討する。 この深さでは、骨整形手術がSRPより有意にポケットを減らします。先行研究では臨界値としてポケット5.4mmが提案されており(5.4mm以上で外科、2.9〜5.4mmで非外科)、この解析とも整合します。
3つ目。深さ以外の適応も忘れない。 根分岐部病変や根面の溝・陥凹があってSRPが物理的に届かない場合は、アクセスを得るための外科が適応だと著者らも明記しています。深さは判断の軸のひとつであって、すべてではありません。
4つ目。メインテナンスが前提。 この8研究の患者は全員が3〜6か月ごとのメインテナンスを受けています。3か月ごとの支持療法があれば、プラークコントロールの状態にかかわらず長期に維持できるという報告もあります。術式の議論は、その土台の上に乗っています。
今日のひとこと
慢性歯周炎を対象に、外科治療(改良ウィドマンフラップ・骨整形手術・歯肉弁剥離掻爬・縁下掻爬)と非外科治療(SRP)を2年以上追跡して比較した前向き比較試験8本を集め、術前のポケット深さで「浅い1〜3mm」「中等度4〜6mm」「深い7mm以上」の3つに層別してメタ解析した研究。浅い部位(1〜3mm)では、どの治療でも付着レベルを失いました——SRPで23.2%、改良ウィドマンフラップで39.4%、骨整形手術で61.39%の喪失。メタ解析でも、SRPは骨整形手術より0.30mm、フラップ手術より0.22mm付着の喪失が少ない(いずれもp<0.05)という結果でした。中等度(4〜6mm)では、ポケットの減少はSRP 18.7%・フラップ25.4%・骨整形30.8%と外科が優る一方で(フラップ手術がSRPより0.35mm多く減少、p<0.05)、付着の獲得はSRPのほうが有意に良好(フラップ比0.29mm・骨整形比0.34mm、いずれもp<0.05)。深い部位(7mm以上)では、ポケットの減少はSRP 21.6%・フラップ33.1%・骨整形42.8%で、骨整形手術がSRPより0.83mm多く減少(p<0.05)。付着については、骨整形手術とSRPで差がありませんでした。著者らの臨床的示唆は明快です——「4〜6mmの中等度では、付着の喪失が少ないSRPのほうが好ましい」「7mm以上で外科の適応があるなら、骨整形手術がポケット減少で優る」。先行研究では外科の適応となる臨界値としてポケット5.4mmが提案されています。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


