ペリオ|Phase2 歯周外科
エムドゲインやGTRで骨縁下欠損を治療すると、1年後には3mm前後のアタッチメント獲得が得られます。問題はその先です。5年、10年と経ったとき、その獲得はどれだけ残っているのか。Sculeanらは1996年から治療した38名を10年間追いかけました。答えは「ほとんど減らない」。ただし、条件があります。
①1年後の数字は、多くの論文が教えてくれる
骨縁下欠損に対する再生療法。EMD(エナメルマトリックスタンパク/エムドゲイン)やGTR(組織再生誘導法)が、フラップ手術単独より高いアタッチメント獲得をもたらすことは、数多くの比較試験で示されてきました。
問題は、その先です。患者さんに「10年後もこの状態が保てます」と言えるのか。GTRについては最長16年までの追跡がありましたが、EMDやEMD+GTRの併用について、10年という単位の前向きデータは、この論文の時点で発表されていませんでした。
そこで著者らは、1996〜1997年に手術した患者を、同じ4群のまま10年追跡しました。5年の結果はすでに報告済みで、これはその続きにあたります。
②4つの術式を、1人の術者が
選択基準は明確です。PPD 6mm以上で、エックス線上の骨縁下成分が3mm以上ある骨縁下欠損が1つあること。治癒に影響する全身疾患がないこと。治療前6か月間に抗菌薬を使っていないこと。プラークインデックスが1以下という良好な口腔衛生。
手術の3か月前から、全員に口腔衛生指導と全顎のスケーリング・ルートプレーニングを実施しています。手術はすべて1人の術者(A.S.)が、臨床計測はすべて別の1人(F.S.)が盲検化された状態で行いました。
4群の内訳はEMD(10名)・GTR(10名・Resolut吸収性膜)・EMD+GTR(9名)・OFD=フラップ手術単独(9名)。EMDを使う群では24% EDTAゲルで2分間根面処理し、膜は欠損と周囲骨2〜3mmを完全に覆うよう調整しています。術後は10日間の抗菌薬とクロルヘキシジン洗口6週間、術後最初の2か月は隔週、1年目は毎月、その後10年間は3か月ごとのメインテナンスという設計です。
56名で開始し、10年評価を完了したのは38名(平均52歳)。脱落の理由は死亡1名、転居3名、そして11名がメインテナンスに来なくなったことでした。
③10年後も、付着は残っていた
1年後のCAL獲得は、EMD 3.4±1.0mm、GTR 3.2±1.4mm、EMD+GTR 3.3±1.1mm、OFD 2.0±1.2mm(すべてp<0.001またはp<0.01)。
10年後は、EMD 2.9±1.4mm、GTR 2.8±1.2mm、EMD+GTR 2.9±1.2mm、OFD 1.8±1.1mm。1年後と10年後の差は、4群のいずれでも統計学的に有意ではありませんでした。
そして3つの再生療法はいずれも、1年後・10年後の両方でOFDより有意に高いCAL獲得(p<0.05)を示しています。一方、再生療法どうしの差は、どの臨床パラメータでも認められませんでした——EMD+GTRの併用に上乗せはなかったということです。
「3mm以上のCAL獲得」という臨床的に意味のある単位で見ると、差はさらにはっきりします。EMD 6/10、GTR 6/10、EMD+GTR 5/9に対し、OFDは1/9でした。
PPDも見ておきます。ベースライン8.4〜8.6mmが、1年後は4.2〜4.9mm、10年後は4.8〜5.1mm。10年で0.2〜0.8mmわずかに戻っていますが、有意ではありません。歯肉退縮は、OFD群だけが1年後3.5mm・10年後3.5mmと大きく、再生療法群は2.2〜2.7mmにとどまりました。
④この結果を支えているもの
数字の背後にある条件を、著者ら自身が丁寧に書いています。
1つ目。10年間、3か月ごとのメインテナンスに通い続けた人たちである。解析に残った38名は、まさにその条件を満たした人たちです。脱落した18名のうち11名は、メインテナンスに来なくなった患者でした。この18名のデータがあれば、10年の結果は変わっていた可能性があると著者らは明記しています。
2つ目。ほぼ全員が非喫煙者である。38名中、喫煙者は2名だけ。喫煙が再生療法の成績を大きく下げることは以前から示されており、この集団はその影響をほとんど受けていません。
3つ目。プラークコントロールが保たれていた。10年後にはPlI・GI・BOPがわずかに増えていますが、ベースラインや1年後と比べて有意な差ではありません。1年後と10年後でこれらが変わらなかったことが、CALが保たれた理由と考えられます。
なお膜の露出は、GTR群10部位中3部位、EMD+GTR群9部位中2部位で起きました。露出した部分は3週間以内に崩壊しましたが、副作用は生じていません。
⑤明日の臨床へ
1つ目。「10年もちます」は言える。ただし条件つきで。 3か月ごとのメインテナンスを続けられるかどうかが、この結果の前提です。患者さんへの説明では、獲得した3mmと同じくらい、この前提を伝えるべきでしょう。
2つ目。EMDとGTRを併用する理由は、この研究にはない。 EMD+GTRは、EMD単独・GTR単独と比べて、どの項目でも上回りませんでした。コストと手技の負担が増えるだけという読み方になります。
3つ目。フラップ手術単独も「無効」ではない。 OFD群も10年後に1.8mmのCAL獲得を維持しています(ベースラインから有意に改善)。再生療法が選べない状況でも、適切なプラークコントロールがあれば結果は残る——ここは見落とさないでおきたいところです。
4つ目。歯肉退縮の差は、審美領域での術式選択に効く。 OFDの退縮3.5mmに対し、再生療法群は2.2〜2.7mm。1mm前後の差ですが、前歯部では意味を持ちます。
今日のひとこと
PPD 6mm以上・骨縁下成分3mm以上の骨縁下欠損を持つ患者を、EMD/GTR/EMD+GTR/フラップ手術単独(OFD)の4群にランダムに割り付け、1年後と10年後の臨床的アタッチメントレベル(CAL)の変化を比べた研究。登録56名のうち10年評価を完了したのは38名です。1年後のCAL獲得はEMD 3.4mm・GTR 3.2mm・EMD+GTR 3.3mm・OFD 2.0mm。10年後はEMD 2.9mm・GTR 2.8mm・EMD+GTR 2.9mm・OFD 1.8mm——1年後と10年後の差は、どの群でも統計学的に有意ではありません。3つの再生療法はいずれも、1年後・10年後の両方でOFDより有意に高いCAL獲得(p<0.05)を示し、再生療法どうしの差はどの項目でもありませんでした。10年後に3mm以上のCAL獲得が得られた部位はEMD 6/10・GTR 6/10・EMD+GTR 5/9に対し、OFDは1/9。EMD+GTRの併用に上乗せの効果はありませんでした。ただし対象は非喫煙者中心で、3か月ごとのメインテナンスを10年続けられた人たちです。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


