今日の1本 — エビデンスを臨床に
そのメンテ間隔、リスクで決めてる?──通院の規則性で歯の喪失が3倍変わる
メンテの間隔、なんとなく「全員3か月」になっていませんか。160人を約10年追った研究が、「リスク評価(PRA)」と「通院の規則性」が予後をどれだけ左右するかを数字で示しました。
①メンテ間隔、どう決めていますか
歯周治療が終わったあとのメンテ(SPT)は、つい「全員3〜4か月」で一律になりがちです。でも、リスクの高い人と低い人に同じ密度が要るのでしょうか。リスクで間隔を変えるという発想(PRA=歯周リスク評価)を、約10年のデータで検証したのがこの研究です。
②今回の一手——PRAと「通院の規則性」で追う
ベルン大学で、歯周基本治療(APT)を終えた160人を平均9.5年メンテで追跡。治療終了時にPRA(BOP%・残存5mm以上ポケット数・喪失歯数・年齢あたり骨吸収・全身疾患・喫煙の6項目)で低・中・高リスクに分類。あわせて通院の規則性(きちんと通うcompliant/不規則なerratic)も評価し、歯周炎の再発と歯の喪失を解析しました。
③結果1——高リスクは「再発する」
歯周炎の再発(2歯以上で3mm以上の付着喪失)は、低リスク18.2%/中リスク42.2%/高リスク49.2%。多変量解析でも、高リスクは再発の独立した因子でした(オッズ比5.79)。喫煙も再発の強い因子です(オッズ比3.03)。
④結果2——不規則な通院は歯を「3倍」失う
9.5年で失った歯は、きちんと通った人で1.07本、不規則だった人で3.11本。約3倍の差です(歯の喪失率でも4.7% vs 14.7%)。リスク別では高リスク2.59本/中1.02/低1.18。とはいえ全体の49.4%は1本も失っていません。
⑤なぜリスク評価が効くのか
PRAは複数のリスク因子(出血・深いポケット・喫煙など)を束ねて患者を層別します。1つの指標より、組み合わせの方が「次に悪くなる人」を当てやすい。そして、いくら適切な間隔を設計しても通院が途切れれば管理は成立しません。だから「リスクで間隔を決める」と「通い続けてもらう」は両輪です。
⑥明日の臨床へ
メンテ間隔はリスクで設計する——高リスクは年3〜4回、低リスクは年1回でも維持できることが多い。同時に、通院を続けてもらう仕組み(次回予約の固定・リコール連絡・リスクの可視化)を持つ。リスク評価の結果を患者に見せると、「自分は高リスク」という自覚が通院の動機になります。
⑦ここだけ、冷静に補助線
後ろ向き・単施設の研究で、抜歯の判断には術者側の要因も混じります。再発の定義(2歯で3mm以上の付着喪失)は研究によって異なる点にも注意。とはいえ10年という長期で、リスク評価と通院の規則性の重みを実データで示した意義は大きく、メンテ設計の根拠として今も生きています。
今日のひとこと
メンテは「全員一律」でなく、リスクで間隔・規則性で継続。PRA高リスクは再発が増え、不規則な通院は歯の喪失が約3倍。リスク評価を間隔の根拠に、通い続ける仕組みを治療の一部に。
J Clin Periodontol. 2010;37(2):191-199. PMID: 20041980.
※本記事は論文の要点を歯科医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


