1問1答 論文 エンド

EndoActivatorを足せば、スメア層はもっと取れる?——抜去歯40本の実験で、EndoActivatorの有無だけが違う2組の比較では、どの部位でも有意差は検出されなかった。EDTAを使わなかった2群は3部位とも10本すべてがスメア層に覆われ、EDTAを使った2群でも根尖側1/3でスメア層がなかったのは10本中1〜2本(Uroz-Torres 2010)

1問1答 論文 エンド

エンド|単根管の抜去歯40本を回転式ファイルで拡大し、最終洗浄の方法で4群(各10本)に分けて、根管壁のスメア層を走査電子顕微鏡で採点した実験室の研究(Uroz-Torres・González-Rodríguez・Ferrer-Luque 2010・Journal of Endodontics)

最終洗浄に、音波で洗浄液を揺らす EndoActivator を足すと、スメア層はもっと取れるのか。Uroz-Torres らは2010年、単根管の抜去歯40本を4群(各10本)に分け、根管壁を走査電子顕微鏡で見てスメア層を採点しました。EDTAを使わなかった2群は、EndoActivatorを使っても、歯冠側・中央・根尖側の3部位とも10本すべてがスメア層に覆われていました。EDTAを使った2群でも、根尖側1/3でスメア層がなかったのは10本中1〜2本でした。EndoActivatorの有無だけが違う2組の比較では、どの部位でも有意差は検出されませんでした(各群10本の比較で、効果が同じという証明ではありません)。

論文
Effectiveness of the EndoActivator System in Removing the Smear Layer after Root Canal Instrumentation
著者
David Uroz-Torres、Maria Paloma González-Rodríguez、Carmen Maria Ferrer-Luque(スペイン・グラナダ大学)
掲載
Journal of Endodontics 2010;36(2):308-311
種類
抜去歯を使った実験室の研究(in vitro)。歯周病で抜歯された単根管の上顎のヒトの歯40本を、Mtwo で #40/04 まで拡大し、最終洗浄の方法で4群(各10本)に無作為に分けた。4群=4% NaOCl 単独/17% EDTA 1 mL を60秒→NaOCl/NaOCl を EndoActivator で60秒/EDTA を EndoActivator で60秒→NaOCl。根の歯冠側・中央・根尖側を走査電子顕微鏡(400倍)で撮影し、スメア層を3段階で採点(ピアソンのカイ二乗検定)
資金・利益相反
資金と利益相反の記載は見当たらない
PMID
20113797

①EndoActivatorを足せば、スメア層はもっと取れる?

根管の拡大を終えたあとの最終洗浄。次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)とEDTAで洗うのに加えて、音波で洗浄液を揺らす器具を使うと、根管壁のスメア層はもっときれいに取れるのでしょうか。

この問いを、抜去歯を使った実験で確かめたのが、スペイン・グラナダ大学の Uroz-Torres・González-Rodríguez・Ferrer-Luque が2010年に Journal of Endodontics に出した研究です。調べた器具は、音波で動くポリマー(樹脂)のチップで洗浄液を揺らす EndoActivator(Dentsply Tulsa Dental Specialties)です。

結論を先に書きます。
・抜去歯40本を使った実験室の研究。単根管の上顎の歯を回転式ファイルで拡大し、最終洗浄の方法で4群(各10本)に分け、根管壁を走査電子顕微鏡(SEM)で見てスメア層の量を採点した
・EDTAを使わなかった2群(NaOCl単独、NaOCl+EndoActivator)は、歯冠側・中央・根尖側のどの部位でも、10本すべてで根管壁と象牙細管がスメア層に覆われていた
・17% EDTA を使った2群は、歯冠側1/3では10本すべてでスメア層がなかったが、根尖側1/3でスメア層がなかったのはEDTA群で10本中2本、EDTA+EndoActivator群で10本中1本だった
・EndoActivatorの有無だけが違う2組の比較(NaOCl単独 対 NaOCl+EndoActivator、EDTA 対 EDTA+EndoActivator)では、どの部位でも有意差は検出されなかった(各群10本の比較で、効果が同じという証明ではない)
・著者らの結論:この条件では、EndoActivatorは、通常の注射針による NaOCl と EDTA の洗浄に比べてスメア層の除去を改善しなかった

②なぜこの研究が必要だったか

ファイルで根管を削ると、根管壁に削りかすの薄い層(スメア層)ができます。これを取り除くには、有機質と無機質の両方を溶かす洗浄液が要り、NaOCl と EDTA を組み合わせた洗浄が有効だという報告が重ねられてきました(引用文献の結果)。

洗浄液を根管の中で動かす方法には、超音波で揺らす方法(PUI)や音波で揺らす方法があります。著者らは序論で、スメア層の除去を調べた研究は超音波のものに限られ、音波で同じような効果が得られるかは分かっていない、と整理しています。音波で動く新しい器具 EndoActivator は、模型の側枝への洗浄液の到達を良くしたとの報告があり(引用文献の結果)、スメア層についても確かめる必要がありました。

③何をどう比べたか

・試料:歯周病で抜歯された、単根管の上顎のヒトの歯40本。歯冠を切り落として根の長さを15 mmにそろえ、根の外側をマニキュアで覆って、根尖から洗浄液が漏れないようにした
・拡大:Mtwo(回転式のファイル)で #40/04 まで。ファイルごとに 4% NaOCl 1 mL で洗浄(先端の閉じた針 Max-I-Probe を、根管に当たらない深さまで入れる)
・4群(各10本・無作為に分けた)の最終洗浄:
 (1)NaOCl単独:4% NaOCl 3 mL
 (2)EDTA→NaOCl(本文ではEDTA群):17% EDTA 1 mL を60秒 → 4% NaOCl 3 mL
 (3)NaOCl+EndoActivator:4% NaOCl 3 mL を EndoActivator で60秒揺らす(毎分10,000回・#15/02 のチップ)
 (4)EDTA+EndoActivator→NaOCl(本文ではEDTA+EndoActivator群):17% EDTA 1 mL を EndoActivator で60秒揺らす → 4% NaOCl 3 mL
・評価:根を縦に割り、根尖から4・8・12 mm の位置で歯冠側・中央・根尖側の3つに分けて、それぞれの中央を SEM(400倍)で撮影。訓練を受けた2人が別々に、3段階で採点した(スコア0=スメア層なしで象牙細管が開いている、スコア1=根管壁の表面にはないが象牙細管に削りかすが残る、スコア2=表面も象牙細管もスメア層に覆われている)
・統計:ピアソンのカイ二乗検定(P<0.05で有意)

④結果1:EDTAを使わなかった2群は、どの部位も全部スメア層に覆われた

原著の表1の全行を、下の表にまとめました。EDTAを使わなかった2群は、EndoActivatorを使っても使わなくても、3つの部位すべてで10本とも「スコア2(表面も象牙細管もスメア層に覆われている)」でした。

表:最終洗浄の方法と部位ごとの、スメア層の3段階の本数(原著の表1の全行・各群10本) 最終洗浄(各10本) 部位 スコア0 スコア1 スコア2 NaOCl単独 歯冠側1/3 0 0 10本(100%) 中央1/3 0 0 10本(100%) 根尖側1/3 0 0 10本(100%) EDTA→NaOCl 歯冠側1/3 10本(100%) 0 0 中央1/3 8本(80%) 0 2本(20%) 根尖側1/3 2本(20%) 3本(30%) 5本(50%) NaOCl+EndoActivator 歯冠側1/3 0 0 10本(100%) 中央1/3 0 0 10本(100%) 根尖側1/3 0 0 10本(100%) EDTA+EndoActivator→NaOCl 歯冠側1/3 10本(100%) 0 0 中央1/3 5本(50%) 5本(50%) 0 根尖側1/3 1本(10%) 4本(40%) 5本(50%) スコア0=スメア層なし(象牙細管が開いている)、スコア1=根管壁の表面にはないが象牙細管に削りかすが残る、ス コア2=表面も象牙細管もスメア層に覆われている。 NaOCl=4%次亜塩素酸ナトリウムを3 mL。EDTA=17%のEDTAを1 mL、60秒。 EndoActivatorは毎分10,000回、#15/02のチップで60秒。NaOClの群はNaOClを、EDTAの群はEDTAを揺らした。 歯冠側・中央・根尖側=根尖から12・8・4 mmの溝で分けた各部位の中央で撮影。 抜去歯を使った実験室の研究・単根管の上顎の歯40本を4群(各10本)に分けた・根管壁を走査電子顕微鏡(400倍)で 撮影して採点
表:最終洗浄の方法と部位ごとの、スメア層の3段階の本数と割合(原著の表1の全行。各群10本)。オレンジは根尖側1/3でスメア層がなかった本数。

EDTAを使った2群では、歯冠側1/3は10本とも「スコア0(スメア層なし)」でした。中央1/3では EDTA群8本・EDTA+EndoActivator群5本、根尖側1/3では EDTA群2本・EDTA+EndoActivator群1本がスコア0で、根尖に近いほどスメア層が残りました。

⑤結果2:EndoActivatorの有無では、どの部位でも有意差は検出されなかった

スメア層がなかった(スコア0の)本数の割合を、部位ごとに並べたのが下の図です。

0 25% 50% 75% 100% スメア層がなかった本数の割合(%) 0% 0% 0% 100% 80% 20% 0% 0% 0% 100% 50% 10% NaOCl単独 EDTA→NaOCl NaOCl+EA EDTA+EA→NaOCl 歯冠側1/3 中央1/3 根尖側1/3 EA=EndoActivator。各群10本のうちスコア0(スメア層なし・象牙細管が開いている)だった本数の割合(原著の表1)。棒は左から歯冠側・中央・根尖側1/3(濃い順)。検定(ピアソンのカイ二乗検定)は3段階のスコアの分かれ方を比べたもので、この図のスコア0の割合だけを比べたものではない。EndoActivatorの有無だけが違う2組の比較では、どの部位でも有意差は検出されなかった(組ごとのPの値は示されていない)。抜去歯を使った実験室の研究・単根管の上顎の歯40本を4群(各10本)に分けた・根管壁を走査電子顕微鏡(400倍)で撮影して採点
図:スメア層がなかった(スコア0の)本数の割合(原著の表1から、スコア0だけを抜き出した。各群10本)。NaOCl単独とNaOCl+EndoActivatorは、3部位とも0本。検定は3段階のスコアの分かれ方を比べたもので、この図の割合だけを比べたものではない。

統計の検定は、スコア0だけでなく、3段階のスコアの分かれ方を比べたものです(ピアソンのカイ二乗検定)。4群をまとめて比べると、歯冠側・中央・根尖側のどの部位でも有意差がありました(いずれも P<0.05)。そのうえで著者らは、有意差がなかったのは、EndoActivatorの有無だけが違う2組(NaOCl単独 対 NaOCl+EndoActivator、EDTA 対 EDTA+EndoActivator)だけだったと書いています。組ごとの P の値そのものは示されていません。

中央1/3を見ると、スコア0は EDTA群8本・EDTA+EndoActivator群5本でしたが、スコア2は EDTA群2本・EDTA+EndoActivator群0本で、どちらかが一方的に良いとは言えない分かれ方でした。

部位どうしの比較では、EDTAを使った2群でだけ有意差がありました(EDTA群は歯冠側 対 根尖側、中央 対 根尖側。EDTA+EndoActivator群は3つの組すべて。いずれも P<0.05)。

⑥著者らの結論と、結果の読み方

著者らは、次のように考察しています。

・EndoActivator:この条件では、通常の注射針による NaOCl と EDTA の洗浄に比べ、スメア層の除去を改善しなかった。音波は超音波より振動数がずっと低く、洗浄液の細かな流れ(音響流)が弱いためかもしれない(著者らの推測)
・EDTA:スメア層を最もよく取り除けたのは、17% EDTA の最終洗浄に関係していると考えられる。EDTAを使わないと、EndoActivatorを使っても3部位ともスメア層に覆われていた(著者ら)
・根尖側1/3:最終洗浄の量が少ないこと(EDTA 1 mL・NaOCl 3 mL)や、根尖に届く洗浄液が少ないこと、根尖を封じた条件などが関係しているかもしれない(著者らの推測)
・今後:洗浄液の種類・量・揺らす時間を変えた研究が必要(著者ら)

読み方として大事なのは、「有意差が検出されなかった」は「効果が同じと示された」ではない点です。各群10本の小さな実験で、組ごとの P の値も示されていません。また調べたのは、1分間・#15/02 のチップ・EDTA 1 mL という1つの使い方と、スメア層という1つの指標だけです。削りかすの除去、細菌の減少、側枝への洗浄液の到達、患者の治療成績は測っていません。

⑦明日の臨床へ

この研究から持ち帰れるのは、次のような読み方です(筆者の読み)。

・スメア層を取りたいなら、EDTA の最終洗浄を外さない:この実験では、EDTAを使わなかった2群は、EndoActivatorを使っても3部位とも10本すべてがスメア層に覆われた
・器具を足しても、根尖側1/3は残りやすい:EDTAを使った2群でも、根尖側1/3でスメア層がなかったのは、EDTA→NaOCl群で10本中2本、EDTA+EndoActivator→NaOCl群で10本中1本だった
・EndoActivatorの上乗せは、この条件では検出されなかった:1分間・#15/02 のチップ・EDTA 1 mL という使い方で、各群10本の抜去歯の実験。ほかの使い方や、スメア層以外の目的での効き目は、この研究からは分からない
ここだけ、冷静に補助線(1)抜去歯を使った実験室の研究で、各群10本と小さな実験です。患者の治療成績は見ていません。有意差が検出されなかったことは、効果が同じという証明ではありません。
(2)試料は単根管の上顎の歯だけで、根の外側を覆って根尖から洗浄液が漏れない条件です。曲がった根管や大臼歯にそのまま当てはまるかは分かりません。
(3)SEM は各部位の中央1か所を400倍で撮った写真だけで採点しています。2人の採点の一致の度合いは「十分」と書かれているだけで、数値は示されていません。組ごとの P の値と、何回も比べたことへの補正も示されていません。
(4)原著の中で、要旨では最終洗浄を「1 mL の 17% EDTA または 4% NaOCl」と書き、方法の節では NaOCl を 3 mL としています(本記事は方法の節に従いました)。また結果の数は表1では10本のうちの本数で示し、本文では根管壁の割合とも書いています。
(5)資金と利益相反の記載は見当たりませんでした。とても分かりやすい結果ですが、器具の使い方を変えた研究と合わせて読みたい1本です。

今日のひとこと

この実験では、スメア層を取り除けるかどうかを分けたのはEDTAの最終洗浄を使ったかどうかで、EndoActivatorを足した上乗せは、どの部位でも有意差として検出されませんでした。ただし各群10本の抜去歯の実験で、1分間・1つのチップという1つの使い方を見ただけです。根尖側1/3はEDTAを使ってもスメア層が残りやすい。この2つを、最終洗浄の組み立てに生かすのが、この論文に合った使い方です。

Uroz-Torres D, González-Rodríguez MP, Ferrer-Luque CM. Effectiveness of the EndoActivator System in removing the smear layer after root canal instrumentation. J Endod. 2010;36(2):308-311. doi: 10.1016/j.joen.2009.10.029. PMID: 20113797
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。