1問1答 論文 エンド

細い根管のグライドパス、手用Kファイルで大丈夫?——抜去歯30根管のマイクロCT比較で、OGP運動は根尖1mm・3mmの根管のずれが手用より少なく、ファイルの変形も出なかった(2021年)

1問1答 論文 エンド

エンド|初期の太さが#8以下の細い根管で、グライドパス(#10〜#15)を手用のステンレスKファイルで作るか、OGP運動(往復運動の組み合わせ)のエンジンで作るか。抜去した下顎大臼歯の近心根管30本をマイクロCTで比べた実験室研究(Liu 2021・BMC Oral Health)

石灰化して細い根管で、#8が通ったあとのグライドパスづくり。手用のKファイルで時間をかけて広げるのが定番ですが、根管がずれる(トランスポーテーション)心配や、ファイルが曲がる・折れる心配がつきまといます。この研究は、抜去した下顎大臼歯の近心の細い根管30本を2群に分け、手用ステンレスKファイル#10〜#15と、OGP運動(90°・300rpm)で動かすMGPファイル#10〜#15でグライドパスを作り、マイクロCTで前後を比べました。結果、根尖から1mm・3mmの根管のずれはOGP群のほうが有意に少なく(1mm:手用0.317 対 OGP0.032、3mm:手用0.183 対 OGP0.056)、5mmでは有意差なし。中心を保つ力(センタリング比)はどの高さでも差なし。手用群では#10のKファイル6本が大きく変形し、OGP群は変形・破折とも0本でした。ただし抜去歯の実験(各群15根管)で、治療時間や治療成績は調べていません。

論文
Comparison of canal transportation and centering ability of manual K-files and reciprocating files in glide path preparation: a micro-computed tomography study of constricted canals
著者
Jing-Yi Liu, Zhi-Xiong Zhou, Wei-Ju Tseng, Bekir Karabucak(中国・米国)
掲載
BMC Oral Health 2021;21:83. doi:10.1186/s12903-021-01440-3
種類
実験室研究(in vitro・抜去歯)。抜去した下顎大臼歯15本の近心根管30本(近心頬側15・近心舌側15、根管の弯曲20〜40°、初期の根尖の太さ#8以下)を#6〜#8のKファイルで穿通したのち、層別ランダム化で2群に分割。第1群(手用・15根管):あらかじめ曲げたステンレスKファイル#10〜#15を手で作業長まで。第2群(OGP・15根管):MGPスーパーファイル#10〜#15(MANI)をTri Auto ZX2(モリタ)のOGP設定(90°・300rpm)で。ファイル1本は2根管(近心根1本分)まで。施術は両方の手技に慣れた歯科医師1人。マイクロCTで前後を撮影し、根尖から1・3・5mmの断面でトランスポーテーションとセンタリング比を計算(Gambillらの式)。統計は対応のあるt検定(P<.05)
PMID
33622296

①#8がやっと通った。その次、何で広げますか?

石灰化して細い根管。#6、#8でようやく穿通できた。ここから#10、#15とグライドパスを広げていく場面で、手用のKファイルを少しずつ回して進めるのが定番です。でも時間はかかるし、根尖付近で根管がずれたり、細いファイルが曲がったりするのも気になります。

この研究は、手用のKファイルで広げる方法と、モリタのOGP(Optimum Glide Path)という往復運動の組み合わせで機械的に広げる方法を、抜去歯の細い根管で比べました。

結論を先に言います。根尖から1mm・3mmの根管のずれ(トランスポーテーション)は、OGPのほうが有意に少なかった。一方で5mmでは有意差なし、中心を保つ力(センタリング比)はどの高さでも差なし。そして手用群では#10のKファイル6本が大きく変形し、OGP群では変形も破折も0本でした。

②なぜ細い根管のグライドパスが問題になるのか

グライドパスは、根管口から根尖まで、あとに続くファイルが通れる「なめらかなトンネル」を作る工程です。これがあると、トランスポーテーション・レッジ・ジップといった根管の変形や、回転ファイルの破折を減らせると考えられてきました。

・手用のステンレスKファイル(#10〜#20):ウォッチワインディングやバランスドフォースで進めるのが推奨されてきた。ただし難しい症例ではとても時間がかかり、トランスポーテーションが増えやすいとも言われる
・NiTiの連続回転のグライドパスファイル:速く、形を保ちやすい。ただし石灰化した細い根管ではねじ込まれる力(スクリューイン)で瞬間的にねじれの負荷がかかり、破折につながることがある

そこで出てきたのがOGPです。著者らの説明では、左右同じ角度の往復(オルタネート)と、反時計回りのほうが大きい往復(90°/120°、180°/270°、240°/330°)を交互にくり返す動きで、手で行うウォッチワインディングやバランスドフォースをまねることを狙っています。ただ、細い根管でトランスポーテーションや中心を保つ力がどうなるかは分かっていませんでした。

③今回の一手:抜去歯の細い根管30本で、手用とOGPを比べる

・試料:抜去した下顎大臼歯15本の近心根管30本(近心頬側15・近心舌側15)。根管の弯曲20〜40°、マイクロCTで確かめた初期の根尖の太さは#8以下
・下準備:顕微鏡下で#6〜#8のKファイルで穿通し、作業長を決定(#8を根尖孔から少し出した長さから0.5mm引く)
・第1群(手用・15根管):あらかじめ曲げたステンレスKファイル#10〜#15を手で作業長まで
・第2群(OGP・15根管):MGPスーパーファイル#10〜#15(MANI)を、Tri Auto ZX2(モリタ)のOGP設定(90°・300rpm)で。ペッキングと横方向の動きを組み合わせる
・共通:RC-Prepを潤滑剤に、3%次亜塩素酸ナトリウムで洗浄。ファイル1本は2根管(近心根1本分)まで。施術は両方の手技に慣れた歯科医師1人
・評価:マイクロCT(21μm)で前後を撮り重ね合わせ、根尖から1・3・5mmの断面でトランスポーテーションとセンタリング比を計算。ファイルの変形・破折は顕微鏡で記録

トランスポーテーションは「0」なら根管がまったくずれていないこと、センタリング比は「1」なら完全に中心を保って削れていることを表します。

④結果①:根尖1mm・3mmのずれは、OGPが有意に少なかった

0 0.2 0.4 0.6 トランスポーテーション平均値(0=ずれなし) 0.317 0.032 0.183 0.056 0.114 0.075 1mm 手用 1mm OGP 3mm 手用 3mm OGP 5mm 手用 5mm OGP 原著Fig.2(各群15根管・根尖からの距離別)。1mm P=0.015、3mm P=0.031で有意、5mm P=0.143で有意差なし。単位は原著の図表に明記なし
根尖からの距離別にみたトランスポーテーションの平均値(原著Fig.2・各群15根管)。オレンジ=手用Kファイル、ティール=OGP

根尖から1mmでは手用0.317に対してOGP0.032(P=0.015)、3mmでは手用0.183に対してOGP0.056(P=0.031)で、どちらもOGPのほうが有意に少なくなりました。5mmでは手用0.114、OGP0.075で、有意差はありませんでした(P=0.143)。

注目したいのは、手用群のばらつきの大きさです。1mmの手用群は0.317±0.392と、標準偏差が平均値より大きい。うまくいく根管と、大きくずれる根管が混ざっていた可能性があります。OGP群は0.032±0.042と、小さい値にまとまっていました。

⑤結果②:中心を保つ力は差がなかった

0 0.3 0.6 0.9 センタリング比の平均値(1=完全に中心) 0.505 0.571 0.372 0.414 0.426 0.569 1mm 手用 1mm OGP 3mm 手用 3mm OGP 5mm 手用 5mm OGP 原著Fig.3(各群15根管)。どの高さでも有意差なし(P=0.652/0.734/0.237)
根尖からの距離別にみたセンタリング比の平均値(原著Fig.3・各群15根管)。1に近いほど中心を保っている

センタリング比は、1mmで手用0.505・OGP0.571、3mmで0.372・0.414、5mmで0.426・0.569。どの高さでもOGPのほうが少し高めでしたが、いずれも有意差はありませんでした(P=0.652、0.734、0.237)。著者らは考察で「5mmではOGPのほうがよい傾向」と触れていますが、統計的には「同じくらい」と読むのが素直です。

⑥結果③:ファイルの変形は手用群だけに出た

手用群では、#10のKファイル6本が、先端1〜3mmのところで大きく変形しました。OGP群では、変形も破折も1本もありませんでした(ファイル1本は2根管まで使用)。

なぜOGPで根管のずれや変形が少なかったのか。著者らは次のように考えています(著者らの考察)。

・同じ角度の往復と、片側が大きい往復を組み合わせることで、ファイルが根管に食い込む・ねじ込まれる力を減らし、ねじれや曲げの負担を小さくする
・OGP 90°は、OGP 180°・240°や連続回転より、繰り返し疲労とねじれに強いという先行研究がある
・1mmほどの短いペッキングで、ファイルと象牙質が触れる時間と面積が小さくなり、ねじれの負担がたまりにくい
・逆に手で動かす方法は、もとの根管の形を保つのにずっと手間がかかる

⑦明日の臨床へ

・#6〜#8での穿通と作業長の確認は、この研究でも両群とも手用で行っている。ここは変わらない。
・その次の#10〜#15への広げ方に、エンジンの往復運動(OGPなど)という選択肢がある。細く弯曲した根管の根尖付近で、根管のずれを抑えられる可能性が示された。
・手用で広げるなら、#10のKファイルは先端が変形しやすい。この研究では2根管までの使用で、#10のKファイル6本が大きく変形した。先端をこまめに見て、早めに交換する。
・ただしこれは抜去歯での比較。「OGPなら安全」「治療がうまくいく」とまで言える研究ではない。

OGPに対応したモーターが手元にあるなら、細い根管のグライドパスで一度試してみる価値はありそうです。手用で続けるなら、ファイルの変形に目を配る——その程度の距離感で受け取るのがちょうどよさそうです。

⑧ここだけ、冷静に補助線

これは抜去歯を使った実験室研究(in vitro)で、各群15根管です。施術者は1人で、評価が群を伏せて行われたかは書かれていません。
比べているのは「手で動かすステンレスKファイル」と「OGPで動かすMGPスーパーファイル」で、動かし方とファイルの種類が同時に違います。どちらの違いが効いたのかは、この研究だけでは分けられません。
ここからは筆者の読みです。2群は別々の根管に割り付けられていますが、統計は対応のあるt検定とされていて(サンプル数の計算は独立した2群の検定で行っている)、手法の書き方に分かりにくさがあります。ファイルの変形は本数を記録しただけで、群の差を統計で検定してはいません。トランスポーテーションの単位は図表に明記されていません。要旨の「臨床的意義」には「より安全で効率的」とありますが、治療時間は測っておらず、治療成績も調べていません。著者ら自身も、連続回転やほかの往復運動との比較が今後の課題としています。
それでも、#8以下の細い根管という難しい条件で、根尖付近のずれとファイルの変形に差が出たことをマイクロCTで示した点は、グライドパスの道具選びを考える材料になります。

今日のひとこと

細い根管のグライドパスづくりで、OGP運動(90°・300rpm)のエンジンは、手用Kファイルより根尖1mm・3mmの根管のずれが有意に少なく(1mm:手用0.317 対 OGP0.032、3mm:手用0.183 対 OGP0.056)、5mmでは有意差なしでした。中心を保つ力は両群で差なし。手用群では#10のKファイル6本が大きく変形し、OGP群は変形・破折0本。ただし抜去歯30根管の実験室研究で、動かし方とファイルの種類が同時に違い、治療時間や治療成績は調べていません。持ち帰るのは「#8で穿通したあとの広げ方にも、機械の往復運動という選択肢がある」という一点です。

Liu JY, Zhou ZX, Tseng WJ, Karabucak B. Comparison of canal transportation and centering ability of manual K-files and reciprocating files in glide path preparation: a micro-computed tomography study of constricted canals. BMC Oral Health. 2021;21:83. doi:10.1186/s12903-021-01440-3. PMID: 33622296
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。