1問1答 論文 エンド

III型の歯内歯で、歯髄が生きていても陥入部は感染する?——歯内歯の見つけ方と分類ごとの対応

1問1答 論文 エンド

エンド|歯内歯の形態・感染部位・歯髄の状態を分けて考える。Gallacherらのナラティブレビュー(2016年)

明らかなう蝕や外傷歴がない側切歯に、根の周囲の病変を疑う所見がある。そんなときに考えたい形態異常が歯内歯です。原著はIII型の治療節で、陥入部が感染しても主根管の歯髄は生活・健全なままのことがあると説明しています。Gallacherらは、臨床所見と画像による発見の手掛かり、Oehlers分類ごとの対応を整理しました。治療効果の比較研究ではなく、推奨は総説の著者らの見解として紹介します。

論文
Dens invaginatus: diagnosis and management strategies
著者
A Gallacher, R Ali, S Bhakta
掲載
Br Dent J 2016;221(7):383-387. doi:10.1038/sj.bdj.2016.724
種類
ナラティブレビュー。既存文献と図示症例を用いて成因・分類・診断・対応を整理。新規の比較対象集団や統合した症例数は提示されていない。
PMID
27713460

①III型の歯内歯で、歯髄が生きていても陥入部は感染する?

明らかなう蝕も外傷歴もない側切歯に、根尖性歯周炎を疑う症状がある。ところが、歯髄診には反応する。そんなとき、感染源を主根管だけに求めてよいのだろうか。

Gallacherらの総説が示す、見逃したくない可能性がある。原著はIII型の治療節で、陥入部が感染しても歯髄が生活・健全なままのことがあると説明している。根の周囲の病変と歯髄の状態を、同じものとして扱わないことが出発点になる。

歯内歯の見つけ方と分類ごとの対応。この総説を、その順番で読んでみよう。

②外から見える形と、中の複雑さは一致しない

歯内歯(dens invaginatus)は、歯の発生中、石灰化が完了する前にエナメル器が歯乳頭へ入り込む形態異常だ。エナメル質が象牙質の中へ折れ込んだ陥入部は、歯冠内にとどまることも、歯根まで達することもある。

そのくぼみには細菌が停滞し、う蝕や歯髄壊死につながりうる。しかも、無症状で、歯冠の外形にほとんど変化がないこともある。著者らは、複雑な内部形態に加えて、歯根完成前の歯髄壊死が根の形成を妨げ、根尖が大きく開いた状態になることも治療を難しくすると説明している。

以前は根の周囲に病変がある歯内歯の多くが抜歯されていたが、歯内療法の進歩により、非外科的治療と、ときに外科的治療で保存できる歯が増えたという。ただし、著者らがまず重視するのは早期発見と予防的対応である。

③2016年のナラティブレビュー

この論文は、歯内歯の成因・分類・診断・対応を既存文献と図示症例で整理した総説だ。新たな患者群に治療を割り付けて効果を比較した研究ではない。治療の推奨は著者らの見解として読む。

見どころは、陥入部がどこまで達するかという分類を、診査と治療の選択へ結び付けていること。分類名を覚えるだけではなく、「どこにつながるか」「どこが感染しているか」を考えるための整理である。

④見つける手掛かりは、側切歯・口蓋側・反対側

著者らは側切歯が最も罹患しやすいと述べる。目立つ歯冠変形がなくても、発達した舌面結節や切縁の切れ込みが手掛かりになる。原著の図示例にも、口蓋側の歯頸結節が目立つ歯が登場する。

また、原著が引くGrahnenらの報告では両側性の例があり、著者らは歯内歯を見つけたら、反対側の同名歯も確認するよう勧めている。明らかなう蝕や外傷歴がないのに歯髄炎・根尖性歯周炎の症状がある場合も、歯内歯を考慮する場面だ。

画像では、歯頸結節や切縁の下にある透過性のくぼみと、その周囲のエナメル質による不透過像などが手掛かりになる。著者らが引用文献を踏まえて挙げる撮影法は、水平角度を変えた2枚のデンタル。単一方向の像で陥入部が隠れるのを避けるためだ。

CBCTは複雑な内部形態を立体的に把握する助けになると述べられている。分類の判断、歯内療法が可能かの検討、根尖部の外科処置を考える際の周囲構造との位置関係に役立つという位置付けだ。

つまり: 著者らが勧めるのは、形態の診査と画像の確認を組み合わせること。外形だけで内部の陥入を除外しない。

⑤分類は、陥入部がどこにつながるかで読む

原著が紹介するOehlers分類は、陥入の広がりと歯根膜との交通で整理できる。CEJはセメント・エナメル境のことだ。

  • I型:歯冠内に限局。陥入部はCEJを越えず、分類上は歯髄を巻き込まない。
  • II型:CEJを越えて歯根内へ。歯根の中にとどまり、歯根膜との交通はない。歯髄を巻き込む場合も、巻き込まない場合もある。
  • IIIa型:歯根側面で歯根膜と交通。歯根を通る陥入部が、側面の別の孔を介して歯根膜につながる。通常、歯髄そのものは巻き込まれない。
  • IIIb型:根尖孔で歯根膜と交通。こちらも、歯髄の形態に直接関与しないことが多いが、歯の内部形態は大きく変わる。

ただし、分類は陥入の形態であり、現在の歯髄の状態とは別だ。原著はI型にも歯髄壊死を伴う場合の治療を記載している。「I型だから歯髄は健全」と読み替えることはできない。

⑥同じ「封鎖」でも、分類で対応が変わる

以下は、総説の著者らが示す対応である。陥入が深ければ一律に大きく開ける、という話ではない。

I型:早期の封鎖を著者らは推奨。発見時に口蓋側の歯面を酸処理し、フロアブルコンポジットレジンで陥入部の入口を封鎖して、う蝕を予防する考え方だ。歯髄壊死がある場合は根管治療を行い、陥入部全体をアクセス窩洞に取り込むとしている。

II型:内部のう蝕を確認して清掃・修復。表面のエナメル質が保たれて見えても、深部にう蝕が隠れている可能性がある。著者らはI型と同じように入口だけを封鎖することを勧めず、入口を開けてう蝕を確認・除去し、陥入部を清掃する方針を示す。歯髄病変の徴候がなければ、主根管へ入らず修復できる。歯髄壊死があれば根管治療を行い、陥入部もアクセスに取り込む。

III型:無症状で歯髄疾患の徴候がなければ封鎖のみ。陥入部と根管が近接するため、予防的に開けて清掃すると歯髄を巻き込む可能性が高い、というのが著者らの理由だ。

一方、III型の治療節には、陥入部内の組織が感染する「peri-invaginatus periodontitis」が登場する。歯髄は生活・健全なままで、歯髄診に反応することもある。著者らは感染した陥入部の歯内療法と、専門医への紹介を挙げている。

感染した陥入部だけを治療できる場合もある。ただし、主根管との位置関係に左右され、歯髄と陥入部の両方が感染していれば両方を扱う。さらに著者らは、組織学的に両者がしばしばつながるという先行文献を踏まえ、両方を治療する考え方にも言及している。歯髄診に反応すれば、主根管を残せると決まるわけではない。

治療後は長期的に経過を確認し、症状が改善しなければ顕微鏡下の外科処置や抜歯も選択肢になると述べられている。著者らの結論は、早く見つけて予防的に対応し、複雑な歯内療法を必要とする状態を避けることにある。

⑦明日の臨床へ

この論文が整理したのは、歯内歯の診断と対応に関する既存文献と著者らの見解であり、治療効果を新たに確かめたものではない。ここから先は筆者の臨床的な読みである。

  • 影だけでなく、歯の形と歯髄の状態を確認する。う蝕や外傷歴と症状がかみ合わない側切歯では、口蓋側や切縁の形、反対側の同名歯、画像内の陥入部を見直すきっかけにしたい。
  • 分類と歯髄の状態を分けて考える。I型・II型・III型という形態の整理に、無症状か、歯髄病変の徴候があるか、感染が陥入部だけなのかという情報を重ねる。
  • 感染したIII型は専門医への紹介を検討する。主根管を残す可能性と両方を治療する必要性を、内部形態から判断するためだ。
持ち帰る視点: 「根尖病変ではない」と一括りにするより、歯髄由来とは限らない感染源を考える。歯内歯は形態異常であり、実際に根の周囲の炎症を伴いうる。
ここだけ、冷静に補助線

これは2016年のナラティブレビューで、治療法の優劣や成功率を比較した研究ではない。文献検索・選択や質評価の手順も示されておらず、推奨は著者らの見解として読む。それでも、形態・感染部位・歯髄の状態を結び付けて診査するための整理は得られる。

原著には表記の不一致もある。図1の右端のX線写真は画像内でIIIb型、図注ではIIIa型と記されている。また、II型は図注で歯髄腔へ達すると説明される一方、分類本文では歯髄を巻き込む場合と巻き込まない場合があるとされる。上の分類説明は本文に沿っており、この写真の型をこちらで確定してはいない。

今日のひとこと

歯内歯では、陥入部の感染と歯髄の状態を分けて考える。形態の分類と感染部位を確かめて対応を選ぶ、というのがこの総説から持ち帰る視点。

Gallacher A, Ali R, Bhakta S. Dens invaginatus: diagnosis and management strategies. Br Dent J. 2016;221(7):383-387. doi:10.1038/sj.bdj.2016.724. PMID: 27713460
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。