1問1答 論文 エンド

根管治療した歯、ポストは入れるべき?——7つの原則(Schwartz 2004 文献レビュー)

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エンド|根管治療歯の修復について、当時の文献を修復側と歯内側の両方の視点から整理し、治療計画・材料・臨床手技の推奨をまとめたナラティブ・レビュー(Schwartz と Robbins 2004・J Endod)

根管治療を終えた歯を前に、「ポストは要るのか」「どのポストを選ぶか」で迷うことがあります。テキサス大学サンアントニオ校の2人は、根管治療歯の修復に関する当時の文献を、修復側と歯内側の両方の立場から整理しました。結論として挙げられたのは7つの原則で、その並びが示唆的です。ポストの材料選びより前に、①根管系に細菌を入れないこと、②臼歯には咬頭被覆を与えること、③根管内と歯冠側の歯質を温存すること、が置かれています。ポストについては「歯冠側の歯質が大きく失われた歯でコアを保持するため」に限り、細い径でも十分な強度があり、保持に足る長さがあり、フェルールを含む抵抗形態を最大化でき、あとから撤去できるものを選ぶ、という順で書かれています。これは一次研究ではなく、文献を選んで解釈したナラティブ・レビューです。

論文
Post Placement and Restoration of Endodontically Treated Teeth: A Literature Review
著者
Richard S. Schwartz, James W. Robbins(テキサス大学ヘルスサイエンスセンター サンアントニオ校〔米国〕・歯内療法学大学院および総合歯科学)
掲載
Journal of Endodontics 2004;30(5):289-301
種類
ナラティブ・レビュー(文献レビュー)。検索式・選択基準・質の評価を示した系統的レビューではなく、著者らが重要と考えた文献を整理して推奨を示したもの。主に当時の新しい文献を扱い、一部の古典的文献も含む。1つの例外を除き、引用文献はすべて査読誌の全文論文と本文に記載。in vitro のポスト比較研究(表3)と後ろ向きのポスト研究(表4)を一覧表にまとめている
PMID
15107639

「ポスト、入れますか」の前に決まっていること

根管充填を終えた歯を前に、まず浮かぶのは「ポストを入れるか」「どのポストにするか」でしょう。材料の選択肢は増え、メーカーの主張も分かれています。

このレビューの結論を先に言うと、成否を分ける要素の並びは、ポストの種類より前にあるというものです。著者らが最後に挙げた7つの原則は、①細菌を入れない ②臼歯は咬頭を覆う ③歯質を残す、から始まります。ポストの話はその後です。

根管治療した歯は、本当に「もろい」のか

古典的な研究は、根管治療した歯の象牙質は生活歯と実質的に違う——水分が失われ、コラーゲンの架橋が減るためもろくなる、と考えてきました。ところが、より新しい研究はこれに異を唱えている、と著者らは書いています。

1991年のHuangらの研究:さまざまな含水状態で、歯内療法をした歯としていない歯の象牙質の物理的・機械的性質を比較。脱水も歯内療法も、象牙質の性質を劣化させていなかったと結論。
SedgleyとMesserの研究:平均10年経過した根管治療歯23本の象牙質を、同じ口の反対側の生活歯と比べた。硬さにわずかな差があった以外は、性質は同等。根管治療歯がもろいという結論を支持しなかった。

では、なぜ根管治療歯は折れるのか。著者らの解釈は「象牙質の変化ではなく、窩洞形成による構造的な一体性の喪失」です。実験室研究では、根管へのアクセス窩洞が機能時の咬頭のたわみを増やすことが示されています(Panitvisaiら)。著者らは複数の文献を合わせて、こうした窩洞形成が咬頭破折と修復物辺縁からの漏洩の可能性を高めると述べています。多くの場合、う蝕や既存修復物によってすでに歯質が失われている。RandowとGlantzは、歯髄を取ると失われる保護的なフィードバック機構も破折に関わりうると報告しています。

数のうえでも、Fennisらは保険請求データで46,000人を超える患者を調べ、歯内療法をした歯では破折が有意に多かったと報告しています。ここから著者らは、「構造的な一体性を高める修復は、強い咬合力にさらされる根管治療歯の予後を良くすると期待される」と結んでいます。

原則1:細菌を入れない(歯冠側漏洩)

唾液による根管系の汚染——いわゆる歯冠側漏洩(コロナルリーケージ)は、歯内療法の失敗を招きうる要因のひとつだと著者らは書きます。二次う蝕や修復物の破折も再汚染につながります。

引用されている実験室研究では、ガッタパーチャの歯冠側を細菌に曝すと、数日のうちに細菌が根尖へ移動したとされ、細菌の産物やエンドトキシンはさらに速く根尖へ達しうる、と述べられています。そのうえで、根管が著しく汚染された場合には再治療を考えるべき、とくに細菌汚染が持続している場合はそうだ、としています。

著者らが勧めている手当て:
・根管治療が終わったらできるだけ早く歯を修復する。すぐにできないときは、根管口と髄床底を歯冠内バリアで封鎖する(根管口を丸いバーでカウンターシンクし、髄床底を酸処理・プライミングして透明なレジンで封鎖する方法が図で示されています)。バリア材にはグラスアイオノマーやコンポジットレジンなど接着性の材料が好ましい。
ポストスペースは、作ったらすぐに修復する。引用された実験室研究では、仮のポスト(テンポラリーポスト)で修復した歯の汚染は、何も入れていない対照とほぼ同程度だったと報告されています(同じ文献は後段でも「仮のポスト/クラウンは根管系の汚染防止に有効ではない」として引かれています)。
・無菌的な手技(ラバーダムを含む)を、治療中も治療後も守る。

原則2:臼歯には咬頭被覆を

ここは、このレビューの中でもっとも記述が強い部分です。

咬頭被覆を支持する所見(著者らの引用)
・根管治療歯1,273本の後ろ向き研究:長期の成功を予測する唯一の有意な修復側の変数が「咬頭被覆の有無」だった
・独立した後ろ向き研究(608本・10年間)でも、長期の成功を予測する有意な因子のひとつとして咬頭被覆が再び挙がった
・最近の後ろ向き研究(400本・9年間):咬頭被覆をした根管治療歯は、歯冠内修復の歯より6倍生存しやすかった(原著の表現。どの指標での6倍かは書かれていません)
同じFennisらの調査:「好ましくない」歯肉縁下の破折は根管治療歯で多かった(原著はこの語を定義していません)
反対の所見:Mannocciらは、ファイバーポストとコンポジットで修復した根管治療歯で、咬頭被覆の有無による失敗の差はなかったと報告。ただし観察期間は3年と短く、差を検出するには十分でないかもしれない、と著者ら自身が注記しています。

そして現実は追いついていません。保険請求の研究では、咬頭被覆で修復されている根管治療臼歯は約50%にとどまると報告されています。

原則3:歯質を残す——ポストは「補強」のためではない

歯種ごとの考え方(このレビューの推奨。数値データではありません) 前歯 歯質がよく残る アクセス窩洞を接着修復で閉じる ポストは利益がほとんどなく、修復不能な失敗の危険を上げる 前歯 クラウンが必要 ポストが必要になることが多い 残存歯質と機能的要求で決める 小臼歯 ポストの必要な頻度が高い 側方力を受けやすい。細い根形態ではポスト窩洞の形成に注意 大臼歯 咬頭被覆はほぼ必須 ポストは多くの場合不要。必要なら最も太く直線的な根管に1本だけ 咬頭被覆は臼歯共通の推奨。ポストの第一の目的はコアの保持で、他に手段がないときにだけ使う
歯種ごとのポストの要否についての、このレビューの記述を整理した図(原著の本文による。数値データではなく著者らの推奨)

原則3は「根管内と歯冠側の歯質を温存する」です。その理由は、ポストの位置づけにあります。著者らは繰り返し書いています。ポストの第一の目的は、歯冠側の歯質が大きく失われた歯でコアを保持することであり、歯を補強することではない。ポストスペースの形成にはリスクが伴い、まれではあるものの、根尖側の穿孔や根中央部の「ストリップパーフォレーション」が起こりうる。ポストは根の破折と治療の失敗の可能性を高めうる、とくにポスト窩洞が大きすぎる場合はそうだ、と。

だから「コアを保持する他の手段がないときにだけ使う」という位置づけになります。

歯質の温存も同じ考え方から来ています。ポストスペースの形成は、根管治療で必要だった以上に根管象牙質を削らないのが原則。セメント合着した金属ポストは根を強くしないとされ、接着性のポストは初期には強くするが、その効果は時間とともに失われるだろう、と書かれています。

ポストを使うなら:長さ・フェルール・撤去できること

ポストを使うと決めたあとに確かめる5つ(このレビューの記述) 強度 細い径でも十分な強度をもつ材料を選ぶ セラミック・ジルコニア・チタン合金・真鍮は避ける 長さ 根管長の3/4、または少なくともクラウンの高さ 最低8mmという報告、骨頂より根尖側までという指摘もある 封鎖 根尖側にガッタパーチャを4〜5mm残す 3mmでは根尖の封鎖が信頼できないとする研究がある 抵抗形態 フェルール(垂直的な歯質の帯)を確保する 1mmで破折抵抗が2倍という研究、1.5〜2mmで最大という研究、差がなかったという研究がある 撤去 あとから外せるポストを選ぶ 1,600本の撤去で根破折は1本という症例集積がある 抵抗形態を欠く修復は、ポストがどれだけよく保持されていても長期的に成功しにくい、と著者らは書いている
ポストを使うときに著者らが挙げている条件(原著の本文による)。フェルールの数値は引用された個々の研究の値で、結果は一致していない

保持(リテンション)は、ポストの長さ・直径・テーパー、合着材、能動的か受動的かで決まります。パラレルはテーパーより、能動的(ねじ込み式)は受動的より保持が高い。ただし能動的なポストは根にストレスを与え撤去も難しいため、最大の保持が要る短い根に限るべきだと著者らは書いています。ただし直径は他の要素ほど重要ではなく、ポスト径を太くすれば保持はわずかに増えるが歯を弱くするので、保持を増やす方法としては勧められないとされています。

抵抗(レジスタンス)は、残存歯質、ポストの長さと剛性、回転防止の形態、そしてフェルールで決まります。著者らは「抵抗形態を欠く修復は、ポストがどれだけよく保持されていても長期的に成功しにくい」と書いています。

フェルール:クラウン形成の歯肉側に残る、垂直的な(高さ方向の)歯質の帯。保持にも少し寄与するが、主として抵抗形態を与え、長期の予後を良くする。
・垂直的な高さ1 mmのフェルールで、フェルールのない歯に比べ破折抵抗が2倍になったとする研究がある
・別の研究群では、垂直的な歯質1.5〜2 mmで効果が最大になるとされる
・一方で、2 mmのフェルールの有無で破折抵抗に差がなかったとする研究もある(ただし破折の様相はフェルールがあるほうが好ましかった)。接着性のポストではフェルールの有無で差がなかったという報告もある
・フェルールを確保するために、歯冠長延長術や矯正的挺出が必要になることもある
ポストの長さ:根管長の3/4、あるいは少なくともクラウンの高さと同じ長さを勧める総説がある。ポスト長がクラウンの高さ以上なら97%が成功したという後ろ向き研究、最低8 mmが必要という報告、骨頂より根尖側まで延ばすべきという指摘も引かれています。
根尖側に残すガッタパーチャ:従来は3〜5 mm。ただし3 mmでは根尖の封鎖が信頼できないとする研究があり、4〜5 mmが勧められています。
撤去できること:非外科的な再治療が必要になったときのため。金属ポストは概ね安全に撤去でき、1,600本のポスト撤去で根破折は1本だけという症例集積があります。ほとんどのファイバーポストも撤去しやすいと報告されている。一方、セラミックとジルコニアのポストは撤去が非常に難しく、不可能なこともあるため避けるべきとされています。同様にチタン合金と真鍮のポストも避けるべき(レントゲンでガッタパーチャやシーラーと見分けにくく、破折強度が低く、撤去も難しい)。

ファイバーポストは金属より良いのか

著者らの答えは慎重です。「接着性の非金属ポストは有望に見えるが、研究は全面的に支持しているとはいえず、答えの出ていない問いが残っている」。

実際、in vitro のポスト比較研究(原著の表3)は結果がまちまちで、連続荷重の試験ではわずかに金属ポスト寄りだった、と本文にあります。破折の様相を評価した研究では、ファイバーポストのほうが好ましい(=修復できる)破折だったという報告が並びます。

臨床研究の数字(原著の記述)
・金属ポスト:歯学生が装着した鋳造ポストコア516本で、前歯部の10年以上の成功率82%788本で5年間の年あたり失敗率2.1%/金属ポストの歯の生存期間の中央値17.4年138本の鋳造ポストコアで失敗9本(最短10年)/25年の追跡では、鋳造ポストコアとクラウンで修復した歯の寿命は生活歯にクラウンをした歯と同等
・ファイバーポスト:1,306本で失敗3.2%(1〜6年)/炭素繊維52本7.7%(平均28か月)/石英繊維180本1.6%(平均30か月)
→ 著者らは、ファイバーポストの結果は観察期間が比較的短い点を明記し、今後の長期研究の監視が必要だとしています。そのうえで結論では、「臨床の趨勢はファイバーポストに向かっており、文献は圧倒的ではないものの概ね好意的。臨床研究はこれまで良好」とも書いています。

明日の臨床へ:7つの原則

著者らの結論(7原則・原著の並びのまま)
1. 根管系への細菌汚染を避ける
2. 臼歯には咬頭被覆を与える
3. 根管内と歯冠側の歯質を温存する
4. 細い径でも十分な強度をもつポストを使う
5. 保持に足るポストの長さを確保する
6. 適切なフェルールを含め、抵抗形態を最大化する
7. 撤去できるポストを使う
補足(筆者の読み):
・並び順そのものがメッセージです。ポストの材料選びは7つのうち後半で、前半3つは材料と関係なく毎回できることです。
・前歯で歯質がよく残っているなら、アクセス窩洞を接着修復で閉じるだけという選択肢が最初に来ます。ポストは構造的に健全な前歯では利益がほとんどなく、修復不能な失敗の可能性を上げる、と書かれています。
・大臼歯は咬頭被覆はほぼ必須、ポストはほとんど不要。必要なときは最も太く直線的な根管(上顎は口蓋根管、下顎は遠心根管)に1本だけ。
・小臼歯は大臼歯より側方力を受けやすく、ポストが必要になる頻度は高い。ただし細い根形態への配慮が要ります。
・避けるべきものがはっきり書かれているのも、この総説の使いどころです(セラミック・ジルコニア・チタン合金・真鍮のポスト)。

ここだけ、冷静に補助線

読むときの補助線:まず、これはナラティブ・レビューです。検索式・選択基準・個々の研究の質の評価を示した系統的レビューではないので、どの文献を取り上げるかに著者らの判断が入ります。著者ら自身、冒頭で「出版された意見の多様さは混乱を招き、最適でない治療選択につながりうる」と書いており、その整理を目的にしたものです(引用文献は1つの例外を除きすべて査読誌の全文論文だと明記されています)。第二に、推奨ごとに根拠の強さが揃っていません。咬頭被覆は複数の後ろ向き研究に支えられている一方、フェルールの高さのように研究間で結果が食い違う項目もあり、in vitro の比較研究(表3)は試験法がまちまちで結論も割れています。第三に、後ろ向き研究と保険請求データが多く、無作為化比較試験ではありません。「6倍生存しやすい」のような表現も、原著はどの指標かを書いていないので、そのままの強さでは受け取れません(もしオッズ比なら、実際に「何倍生き残りやすいか」はこれより小さくなりえます)。第四に、2004年の総説です。ファイバーポストの長期成績、接着材料、ジルコニアの物性は、その後も動いています。著者ら自身が「今後の長期研究を監視する必要がある」と書いていました。それでも、「ポストはコアを保持するためのものであって、歯を補強するものではない」という軸と、原則の並び順は、いま設計を考えるときの物差しとして使えます。

今日のひとこと

著者らの結論:いくつかの基本原則を守れば、現在のほとんどの修復システムで高い成功率を達成できる。その7原則は、①根管系への細菌汚染を避ける ②臼歯には咬頭被覆を与える ③根管内と歯冠側の歯質を温存する ④細い径でも十分な強度をもつポストを使う ⑤保持に足るポスト長を確保する ⑥適切なフェルールを含め抵抗形態を最大化する ⑦撤去できるポストを使う。ポストの目的は「歯を補強すること」ではなく「コアを保持すること」だと繰り返し書かれており、他に手段がないときにだけ使うべきだとしています。これはナラティブ・レビューであり、個々の推奨の根拠の強さは一様ではありません。

Schwartz RS, Robbins JW. Post placement and restoration of endodontically treated teeth: a literature review. J Endod. 2004;30(5):289-301. PMID: 15107639
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。