今日の1本 — エビデンスを臨床に
歯周治療した歯、22年後どうなった?──8割は守れる、でも見極めが要る
歯周治療を終えた歯は、長期でどれだけ残せるのか。この研究は600人を平均22年(最長53年)追跡し、歯の喪失を一人ひとり集計しました。答えは「8割はほぼ守れる、でも見極めが要る」。長期予後の地図を読み解きます。
①治した歯は、何年もつ?
歯周治療を終えた患者さんから、よく聞かれます。「治しても、どうせまた悪くなって抜けるのでは?」。この疑問に答えるには、治療後に長く追いかけたデータが要ります。この研究は、まさにそれを平均22年という長さで集めた古典です。
②今回の一手——600人を平均22年追跡
歯周治療を受けた600人を、平均22年(最長53年)にわたりメインテナンスしながら、歯の喪失を一人ひとり記録。患者を「歯がどれだけ失われたか」で3つのグループに分け、どんな歯が・どんな条件で失われやすいかを分析しました。
③結果=経過は「3つ」に分かれた
大多数は、長期でもほとんど歯を失っていませんでした。83%(499人)はよく維持(WM)群で、22年で失った歯は平均0.68本(うち300人は1本も失わず)。一方、13%はDownhill(5.7本喪失)、4%はExtreme Downhill(13.3本喪失)と、経過には大きな差がありました。
④失いやすい歯・失いにくい歯
失われやすかったのは上顎の大臼歯。複数の根をもち根分岐部という清掃しにくい構造を抱える歯です。逆に最も残りやすかったのは下顎の犬歯・小臼歯。歯の種類によって長期予後がはっきり違うことが示されました。
⑤「疑わしい予後」の歯は、その後どうなったか
治療時に「予後が疑わしい」と判定された歯2,139本のうち、22年で失われたのは666本(31%)。裏を返せば約7割は残せたのです。しかもよく維持された群では喪失は17%にとどまりました。全体の管理が良ければ、危ない歯も救える余地があるということです。
⑥明日の臨床へ
患者さんには「治した歯の多くは、メンテを続ければ20年以上もつ。ただし根分岐部のある上顎大臼歯は弱点なので、特に注意して診ていく」と説明できます。予後が怪しい歯ほどメンテ間隔を詰めて経過を追うことが、長く残す近道になります。
⑦ここだけ、冷静に補助線
これは単一施設の後ろ向き観察で、対照群はありません。長く通院を続けた患者=もともとメンテに前向きな集団に偏っている可能性もあります。また1978年の報告で、現在の歯周治療やインプラントとは時代背景が異なります。とはいえ「治療後に何が起きるか」を長期で示した先駆けとして、いまも予後判定とメンテナンスの土台になっている古典です。
今日のひとこと
歯周治療した歯は、8割の人でほぼ守れる(平均0.68本喪失)。一方で少数に喪失が集中し、上顎大臼歯・根分岐部はハイリスク。治療そのものより、その後の「見極め(予後判定)」と継続メンテが分かれ道になる。
J Periodontol. 1978;49(5):225-237. PMID: 277674.
※本記事は論文の要点を歯科医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


