エンド|抜去した単根歯43本(うち4本は対照)を2種類の形成法で拡大し、マスターコーンのX線上の適合と、側方加圧充填後の放射性カルシウム(45Ca)の漏洩との関係を調べた実験室研究(Allison・Michelich・Walton 1981・Journal of Endodontics)。コーンは全て、形成の長さから1.0mm以内で、引き抜きに軽い抵抗がある状態に合わせてある
マスターコーンを試適してX線を撮る。先端が少し短い、根尖側に隙間が見える。ここで合わせ直すかどうか、迷う場面です。Allisonらは1981年、抜去した単根歯を使い、X線で見たマスターコーンの適合が、側方加圧充填後の根尖の封鎖に影響するかを実験室で調べました。X線で「適合」とされた13本と「非適合」とされた26本のあいだで、広範な漏洩の頻度に有意差は検出されませんでした(適合は13本中8本、非適合は26本中7本。P>0.08)。漏洩と関係したのは根管の形です。スプレッダーが形成の先端から1mm以内に届く根管23本では、広範な漏洩は0本。1mmより手前で止まる根管16本では、15本に広範な漏洩が見られました(P<0.001。15本は原著の表3の8本と7本を筆者が合計)。ただし、「非適合」のコーンも全て、形成の長さから1.0mm以内で、引き抜きに軽い抵抗がある状態でした。抜去歯・まっすぐな単根管・39本の実験室研究で、根管治療の成績を調べた研究ではありません。
①試適のX線、ぴったりでないと根尖は漏れる?
マスターコーンを試適して、X線を撮る。先端が作業長より少し短い。根尖側に、コーンと根管壁のあいだの細い隙間が見える。タグバックは感じるのに、X線では「合っていない」ように見える。ここでコーンを合わせ直すか、そのまま充填に進むか。迷う場面です。
この問いを実験室で調べたのが、Allisonらが1981年に Journal of Endodontics に報告した研究です。抜去した単根歯を使い、X線で見たマスターコーンの適合が、側方加圧充填のあとの根尖の封鎖に影響するかを確かめました。
・見た目の長さと引き抜きの軽い抵抗でコーンを合わせた39本のうち、X線の基準で「適合」は13本、「非適合」は26本(3分の2が非適合)だった
・広範な漏洩は、適合で13本中8本、非適合で26本中7本。両者のあいだに有意差は検出されなかった(P>0.08)
・スプレッダーが形成の先端から1mm以内に届く根管23本では、広範な漏洩は0本。1mmより手前で止まる根管16本では15本(P<0.001。15本は原著の表3の8本と7本を筆者が合計)
・著者らの結論は「コーンが形成の先端から1.0mm以内にあり、引き抜きに軽い抵抗があるなら、X線で評価した適合は根尖の封鎖の質に影響しなかった。漏洩は、形成した根管の形と直接関係した」
・「非適合」とされたコーンも全て、形成の長さから1.0mm以内で、引き抜きに軽い抵抗があった。抜去した単根歯・まっすぐな根管の実験室研究(in vitro)で、根管治療の成績は調べていない
②なぜこの実験が必要だったか
著者らは序論で、こう整理しています。側方加圧では、マスターコーンの適合が、根尖部の緊密な封鎖と根管全体の充填にとって大切な要素だと考えられてきた。根尖部にぴったり合うコーンを目指す点では多くの著者が一致しているが、適合を判定する基準と方法はまちまちだ、と。
判定の方法は3つあります。見た目(コーンの入った長さを形成の長さと比べる)、手ごたえ(引き抜くときの抵抗)、そしてX線です。X線では、根尖側3分の1でコーンと根管壁のあいだに透過像の線が見えれば、側方の適合が不十分で、充填も不十分になると考えられてきました。
コーンの先端をどこまで入れるかも、教科書によって違います。著者らが引いた文献では、形成の全長まで、またはそのわずか手前。根尖孔から0.5mm以内。作業長の1.0mm手前。全長まで合わせてから1.0mmまたは1.5mm切る。こうした幅がありました。ここまでは、著者らが引いた教科書や文献にもとづく整理です。
一方で、著者ら自身の先行研究(1979年)は、スプレッダーが深く入ることが根尖の漏洩を防ぐうえで重要だと示していました。スプレッダーが軟らかいガッタパーチャを根尖部に押しつけるのなら、マスターコーンを厳密に合わせることは決定的ではないかもしれない。けれども、X線の基準と封鎖の関係を調べた実験は、著者らによれば公表されていませんでした。
そこで、この研究の目的は2つです。1つ目は、X線で見たマスターコーンの適合と、根尖の封鎖の質との関係を調べること。2つ目は、X線の基準と、見た目・手ごたえの基準との関係を調べることです。
③何をどう比べたか
材料は、生活歯髄をもっていた抜去単根歯43本です。根管は1本で、根尖孔は閉塞しておらず(patent)、根尖側3分の1の彎曲は20度未満。作業長は根尖から1.0mm以内に決めました。歯は無作為に2群に分けられ、規格形成(standardized)またはステップバック(フレア)形成で拡大されています。
形成した根管にはD-11スプレッダーを入れ、形を2つに分けました。先端が形成の長さから0〜1mmに届く「スプレッダーが深い根管」と、1mmより手前で止まる「スプレッダーが浅い根管」です。各群から2本ずつを陽性・陰性の対照にしたため、実験に使われたのは39本(深い根管23本、浅い根管16本)でした。
マスターコーンはKerr社のfineコーンです。形成の長さの位置でコーンをつかんで根管に入れ、引き抜くときに軽い抵抗を感じるまで先端を切り詰めました。この手順は全ての試料で同じです。コーンは全て、形成の長さから1.0mm以内に合わせてあります。
そのうえで、コーンを入れた状態で隣接面方向のX線を撮り、2人の観察者が盲検で評価しました。
・適合:コーンの先端が形成の先端から0.0〜0.5mmで、根尖側3分の1に側方の隙間がない
・非適合:コーンの先端が形成の先端から0.5〜1.0mm手前、または根尖側3分の1に側方の隙間がある
充填は側方加圧です。マスターコーン、Kerr社のfineのアクセサリーコーン、酸化亜鉛ユージノール系シーラーを使いました。根面はマニキュアで覆い、根尖孔だけを開けておきます。湿度100%・室温で7〜10日保管したあと、放射性カルシウム(45Ca)の液に24時間浸しました。根を0.8mmの厚さで横断に切り、オートラジオグラフで45Caが入った切片を数えて、漏洩の長さを求めています。
漏洩は2つに分けました。「なし〜わずか」は0〜2.4mm、「広範」は3.6mm以上です。2.4〜3.6mmの試料はありませんでした。統計はカイ二乗検定です。
④結果:適合か非適合かより、根管の形
まず、X線での判定です。39本のうち、適合は13本、非適合は26本でした。非適合の内訳は、側方の隙間だけが7本、長さが手前だけが9本、その両方が10本です。見た目の長さと手ごたえで「臨床的に受け入れられる」状態に合わせたコーンの3分の2が、X線の基準では非適合になりました。
根管の形との関係を見ると、スプレッダーが浅い根管16本では8本(50%)が適合、深い根管23本では5本(22%)が適合でした。浅い根管のほうが適合が多い傾向ですが、有意差は検出されていません(P>0.13)。
そして、漏洩です(図)。
適合の13本では、8本に広範な漏洩が見られました。非適合の26本では、7本です。数だけを見ると、適合のほうが広範な漏洩が多くなっています。ただし、この差は統計的に有意ではありませんでした(P>0.08)。「非適合のほうが漏れにくい」と読める結果でもありません。
内訳を見ると、理由が分かります。スプレッダーが浅い根管では、適合の8本中8本(100%)、非適合の8本中7本(87.5%)に広範な漏洩がありました。スプレッダーが深い根管では、適合の5本も非適合の18本も、広範な漏洩は0本。全て「なし〜わずか」でした。
著者らは、どちらの根管の形でも、側方の隙間、根尖側の隙間、その両方のいずれについても、漏洩との相関は認められなかったと述べています。ただし、これは適合と非適合が同等であることを示した結果ではありません。浅い根管だけを見ると、広範な漏洩は適合で8本中8本、非適合で8本中7本でした。一方、スプレッダーが深く入る根管は、浅い根管より漏洩が有意に少ないという結果でした(P<0.001)。X線での適合の評価にかかわらず、です。
対照は予想どおりでした。歯冠側も根尖も封鎖した陰性対照に漏洩はなく、根尖を開けたままの陽性対照では根管の全長に漏洩が見られています。
⑤結果の読み方
著者らの考察は、2つの点に分かれます。
1つ目は、X線の基準の厳しさです。引き抜きの軽い抵抗は、コーンと象牙質がどこかで触れていることを示すけれども、側方の適合を正確に予測するものではなかった。X線は、見た目や手ごたえよりも厳しい試験だった、というのが著者らの整理です。
2つ目は、その厳しい基準を満たす必要があるか、です。著者らは、この研究は、充填前にマスターコーンを厳密なX線の基準に合わせることが、緊密な根尖の封鎖に必要ではないことを示している、と述べています。同時に、こう強調しています。非適合に分類されたコーンに、適合の悪いものは1本もなかった。全て形成の長さから1.0mm以内にあり、引き抜きに少なくとも軽い抵抗があった。この結果は雑な手技を認めるものではない。コーンを合わせるときの許容範囲が、教科書が示すほど厳しくないことを示しているにすぎない、と。
根管の形については、著者らは先行研究と同じ結論を述べています。根尖の封鎖の質に最も影響したのは根管の形で、スプレッダーが深く入る根管では漏洩がほとんどなかった。スプレッダーの力は先端より1〜2mm先まで伝わり、コーンとシーラーを根管壁に押しつけ、根尖側へ押し進めるらしい、という説明です。ただし、力がどこまで伝わるかをこの実験で測ったわけではありません。著者らの推測として読む部分です。
⑥明日の臨床へ
ここからは筆者の読みです。原著の主張ではありません。
試適のX線で、根尖側に細い隙間が見える。先端が0.5〜1.0mm手前にある。この実験の範囲では、それだけで漏洩が増えるという結果にはなりませんでした。条件は、コーンが形成の長さから1.0mm以内にあり、引き抜きに軽い抵抗があることです。1.0mmを超えて短いコーンや、抵抗のないコーンは、この実験に含まれていません。そこまで広げて「合っていなくてよい」とは読めません。
むしろ目を向けたいのは、形成の段階です。側方加圧で充填するなら、スプレッダーが形成の先端近くまで入るテーパーがあるかどうか。著者らは、加圧する器具が形成の先端から2mm以内に届く形成法を支持しています。コーンを何度も合わせ直す前に、スプレッダーを試しに入れて、どこまで届くかを確かめる。手間はほとんどかかりません。
ただし、これは抜去したまっすぐな単根管で、放射性カルシウム(45Ca)の侵入を見た実験です。彎曲根管や複根歯で同じことが言えるか、根尖病変の治癒や歯の予後に結びつくかは、この実験からは分かりません。
(1)実験室研究(in vitro)です。抜去した単根歯の、彎曲の小さい1本の根管を使っています。患者さんの根管治療の成績を調べた研究ではありません。
(2)実験に使ったのは39本で、適合の群は13本だけです。適合と非適合の比較はP>0.08で、有意差は検出されませんでした。これは「差がない」ことの証明ではありません。
(3)適合か非適合かは、根管の形と重なっています。適合の13本のうち8本は、漏洩の多い「スプレッダーが浅い根管」でした。適合と非適合を単純に比べた数(13本中8本と26本中7本)は、この偏りの影響を受けています。
(4)「非適合」のコーンも全て、形成の長さから1.0mm以内で、引き抜きに軽い抵抗がありました。それより外れたコーンについては、何も言えません。
(5)漏洩は、45Caの液に24時間浸して調べたものです。細菌の侵入や、長期の封鎖を見たものではありません。
(6)シーラーは酸化亜鉛ユージノール系の1種類、充填法は側方加圧だけです。ほかのシーラーや充填法に当てはまるかは調べられていません。
(7)引き抜きの抵抗の強さは全ての試料で同じ手順にそろえてあり、変数として調べられていません。
(8)適合と非適合の境目の0.5mmには、原著の中で書き方の揺れがあります。方法の節は「適合=0.0〜0.5mm、非適合=0.5〜1.0mm」、図1の説明は「0.5mm未満」、考察は「0.5mmを超える隙間」です。ちょうど0.5mmのコーンをどちらに入れたかは、原著からは決められません。
(9)方法の詳細は、著者らの1979年の先行論文に書かれており、この論文はその要約を載せています。先行論文は、今回は直接確認していません。
試適のX線にこだわりすぎる前に、スプレッダーが届く形成になっているかを見直す。そのきっかけをくれる研究、という位置づけで読むのがよさそうです。
今日のひとこと
この実験が示したのは、コーンが形成の長さから1.0mm以内にあり、引き抜きに軽い抵抗がある状態なら、X線で見た適合の良し悪しによって、側方加圧充填後の広範な漏洩の頻度に有意差は検出されなかったということです。漏洩と関係したのは根管の形で、スプレッダーが形成の先端から1mm以内に届く根管では、広範な漏洩は1本もありませんでした。著者らは「雑な手技を認めるものではない」と強調したうえで、コーンを合わせるときの許容範囲は、教科書が示すほど厳しくないことを示している、と述べています。ただし、抜去した単根歯39本・まっすぐな根管・1種類のシーラーの実験室研究で、適合の群は13本だけ。根管治療の成績は調べていません。試適のX線をどう読むか、そしてスプレッダーが届く形成をどう考えるかの手がかりの1つ、という位置づけで読みたい1本です。


