1問1答 論文 エンド

グラスアイオノマー系シーラーで根管充填、6〜18か月後の成績は?——3施設・対照群のない前向き研究では、再診できた378本のうち成功78.3%、不完全な治癒15.6%、失敗6.1%。成績の分布は、根尖病変の有無や初回治療か再治療かなどで有意に異なっていた(Friedman 1995)

1問1答 論文 エンド

エンド|グラスアイオノマーセメント系の根管シーラー(Ketac-Endo)とガッタパーチャで根管充填した401人・486本を、6〜18か月後に診査とX線で評価した、3施設・対照群のない前向き臨床研究(Friedman・Löst・Zarrabian・Trope 1995・Journal of Endodontics)。再診できたのは378本(78%)。シーラーと器材は製造元が提供

新しいシーラーを使うとき、気になるのは「治療成績は従来どおり出るのか」です。Friedmanらは1995年、グラスアイオノマーセメント系の根管シーラー(Ketac-Endo)を使った根管治療の成績を、3施設の前向き研究で報告しました。再診できた378本のうち、成功は78.3%(296本)、不完全な治癒は15.6%(59本)、失敗は6.1%(23本)でした。成績の分布は、根管の数、初回治療か再治療か、歯髄の生死、根尖病変の有無、術前の症状、術中の偶発症などで有意に異なっています。術前に根尖病変のなかった169本では成功97.0%、あった209本では63.2%でした。著者らは、この成績は過去の研究と両立するもので、Ketac-Endoを臨床で使えるシーラーとして支持する、と結論しています。ただし、ほかのシーラーと比べた対照群はありません。観察は6〜18か月と短く、486本のうち108本(486−378。筆者の計算)は再診できていません。再診は治療した術者自身が行い、シーラーと器材は製造元の提供です。

論文
Evaluation of success and failure after endodontic therapy using a glass ionomer cement sealer
著者
Shimon Friedman, Claus Löst, Malaekeh Zarrabian, Martin Trope(カナダ・トロント大学歯学部 歯内療法学講座、ドイツ・テュービンゲン大学 保存歯科学講座、米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校 歯内療法学講座)
掲載
Journal of Endodontics 1995;21(7):384-390
種類
3施設の前向き臨床研究(対照群なし)。ドイツ(テュービンゲン)、米国(フィラデルフィア)、イスラエル(エルサレム)の3人の術者が、401人・486本を治療。根管治療が禁忌の歯だけを除外した。手用器具と0.5%次亜塩素酸ナトリウムで、規格形成(standardized technique)により、可能な限りX線上の根尖の1mm手前まで、作業長で35号以上に拡大。複数回の治療では、水酸化カルシウムを貼薬した。Ketac-Endoをレンツロで根管に入れ、作業長に合わせた規格のガッタパーチャのマスターコーン1本を挿入。2人の術者の320本は加圧なし、もう1人の術者の58本は全ての根管で側方加圧。6〜18か月後に、治療した術者が診査とX線で再診した。根尖病変の最大径は、別の評価者が順序を無作為・盲検にして計測。判定は、成功(症状・徴候・根尖部の透過像がない。打診のわずかな違和感は許容)、不完全な治癒(症状・徴候がなく、病変が縮小)、失敗(痛み・腫れ・瘻孔がある、病変が縮小しても打診痛がある、病変が新たにできた、または大きさが変わらない)の3区分。複根歯は、いちばん悪い根で判定。要因との関係はカイ二乗検定(有意水準5%)
資金・利益相反
謝辞に、ESPE社(Ketac-Endoの製造元)がKetac-Endoとその使用に必要な器材を提供したと記されている。そのほかの資金や利益相反についての記載は見当たらない
PMID
7499981

①グラスアイオノマー系シーラー、治療成績は出るのか

新しいシーラーが出るたびに、実験室での封鎖性や生体親和性のデータが並びます。けれども、臨床家が知りたいのは、その先です。実際に患者さんの歯に使って、根尖病変は治るのか。失敗はどのくらい出るのか。

この問いに、グラスアイオノマーセメント系の根管シーラー(Ketac-Endo)で答えようとしたのが、Friedmanらが1995年に Journal of Endodontics に報告した研究です。ドイツ、米国、イスラエルの3人の術者が治療した歯を、6〜18か月後に診査とX線で評価しました。

結論を先に書きます。
・治療した486本(401人)のうち、再診できたのは378本(78%)
・378本のうち、成功78.3%(296本)、不完全な治癒15.6%(59本)、失敗6.1%(23本)
・成績の分布は、根管の数、初回治療か再治療か、歯髄の生死、根尖病変の有無、術前の症状、術中の偶発症、修復の有無などで有意に異なっていた
・術前に根尖病変のなかった169本は成功97.0%、あった209本は成功63.2%(成功・不完全な治癒・失敗の3区分の分布の比較でp<0.001)
・単一コーンと側方加圧のあいだに、有意差は検出されなかった(p>0.4)
・著者らの結論は「この成績は過去の研究で報告されたものと両立し、Ketac-Endoを臨床で使えるシーラーとして支持する」
・ほかのシーラーと比べた対照群はない。観察は6〜18か月。再診は治療した術者が行い、シーラーと器材は製造元が提供した

②なぜこの研究が必要だったか

著者らは序論で、こう整理しています。根管治療の成功率は、過去の多くの研究で48〜95%と報告されている。成功の前提の1つは根管系を完全に充填することで、充填はガッタパーチャとシーラーからなる。そして、シーラーの選択が治療成績に影響するらしい、と。

そこへ登場したのが、グラスアイオノマーセメント系のシーラー、Ketac-Endoです。著者らが引いた文献によれば、骨の中で生体親和性があり、硬化時に収縮せず、Grossmanのシーラーより根管壁への適合とX線造影性にすぐれる。象牙質に接着するので、このシーラーで充填した根は垂直破折に強い。こうした性質から、ガッタパーチャのコーンは1本だけでよいと提唱されていました。コーンを加圧しなければ、加圧に伴う垂直性歯根破折も避けられそうだ、という期待もあります。ここまでは、著者らが引いた文献にもとづく整理で、多くは実験室での報告です。

では、臨床で使ったらどうなるか。この研究の目的は、Ketac-Endoを使った根管治療の成績を評価し、術前・術中・術後のさまざまな要因と関連づけることでした。

③何をどう調べたか

対象は、401人の486本です。テュービンゲン(ドイツ)、フィラデルフィア(米国)、エルサレム(イスラエル)の3人の術者が治療しました。除外したのは、根管治療が禁忌の歯だけです。生活歯、失活歯、すでに根管治療を受けた歯の再治療が、どれも含まれています。

治療の手順はそろえてあります。手用器具と0.5%次亜塩素酸ナトリウムで、規格形成により、可能な限りX線上の根尖の1mm手前まで、作業長で35号以上に拡大。1回で終える場合と、複数回に分ける場合があり、複数回のときは水酸化カルシウムを貼薬しました。

充填は、Ketac-Endoをレンツロで根管に入れ、作業長に合わせておいた規格のガッタパーチャのマスターコーン1本を挿入する方法です。2人の術者が治療した320本では加圧をしていません(ポストを入れる予定の根管にだけ、アクセサリーコーンを加圧せずに挿入)。もう1人の術者が治療した58本では、全ての根管で側方加圧を行いました。

再診は、治療の6〜18か月後。治療した術者自身が、診査とX線撮影を行いました。根尖病変の最大径だけは、別の評価者が、X線の順序を無作為にして盲検で計測しています。

判定は3つです。

・成功:症状・徴候がなく、根尖部の透過像もない(打診のわずかな違和感は許容)
・不完全な治癒:症状・徴候がなく、根尖病変が小さくなっている
・失敗:痛み・腫れ・瘻孔がある。または、病変が小さくなっていても打診痛がある。または、病変が新たにできた、大きさが変わらない

複根歯は、いちばん状態の悪い根で判定しました。成績と各要因の関係は、カイ二乗検定で1つずつ調べています。

大事な点を1つ。この研究には、ほかのシーラーで治療した対照群がありません。全ての歯がKetac-Endoで充填されています。

④結果:全体の成績と、成績を分けた要因

再診できたのは、486本のうち378本(78%)でした。再診できなかった108本(486−378。筆者の計算)のうち83本は、連絡先が分からず呼び出せなかった患者さんの歯です。

378本の成績は、成功296本(78.3%)、不完全な治癒59本(15.6%)、失敗23本(6.1%)でした。

次に、術前の要因ごとの成績です(図1)。以下に出てくるp値はすべて、成功・不完全な治癒・失敗の3区分の分布を群のあいだで比べたカイ二乗検定の値です。成功の割合だけを比べた検定ではありません。

図1:術前の要因と治療成績(原著の表4の全行) 要因 本数 成功 不完全な治癒 失敗 検定 根管の数:1本 144本 85.4% 10.4% 4.2% p<0.04 根管の数:2本以上 234本 73.9% 18.8% 7.3% 初回治療 250本 82.4% 12.0% 5.6% p<0.02 再治療 128本 70.3% 22.7% 7.0% 生活歯 108本 93.5% 1.9% 4.6% p<0.001 失活歯 142本 73.9% 19.7% 6.3% 根尖病変:なし 169本 97.0% 0% 3.0% p<0.001 根尖病変:あり 209本 63.2% 28.2% 8.6% 失活歯のうち 根尖病変なし 29本 93.1% 0% 6.9% p<0.001 失活歯のうち 根尖病変あり 113本 69.0% 24.8% 6.2% 再治療のうち 根尖病変なし 42本 100.0% 0% 0% p<0.001 再治療のうち 根尖病変あり 86本 55.8% 33.7% 10.5% 病変の大きさ:2mm以下 92本 72.8% 20.7% 6.5% p<0.04 病変の大きさ:2mm超 117本 55.6% 34.1% 10.3% 術前の症状:なし 126本 87.3% 11.9% 0.8% p<0.003 術前の症状:あり 252本 73.8% 17.5% 8.7% 再診できた378本。6〜18か月後の判定。検定はカイ二乗検定で、2行ずつの組の成績の分布を比べたもの(多変量の調整はない)。 生活歯・失活歯の区分は初回治療の250本について。対照群(ほかのシーラー)のない前向き研究で、シーラーはKetac-Endo。 病変の大きさの境目は、原著の本文では「2mmより小さい」、表4では「2mm以下」。この図は表4に従った。 成功=症状・徴候と根尖部の透過像がない(打診のわずかな違和感は許容)。不完全な治癒=症状・徴候がなく病変が縮小。複 根歯はいちばん悪い根で判定。
図1:術前の要因と治療成績。原著の表4の全ての行をもとに作成。再診できた378本について、6〜18か月後の判定を示す。

差がいちばん大きかったのは、根尖病変の有無です。術前に病変のなかった169本は成功97.0%、失敗3.0%。病変のあった209本は成功63.2%、不完全な治癒28.2%、失敗8.6%でした(p<0.001)。初回治療の250本は成功82.4%、再治療の128本は70.3%(p<0.02)。生活歯の108本は93.5%、失活歯の142本は73.9%(p<0.001)。根管が1本の歯は85.4%、2本以上の歯は73.9%(p<0.04)。術前に症状のなかった歯は87.3%、あった歯は73.8%でした(p<0.003)。

再治療でも、病変の有無で成績が分かれています。病変のない42本は成功100.0%、病変のある86本は成功55.8%・失敗10.5%でした(p<0.001)。

年齢、性別、歯の部位では、有意差は検出されていません。病変の大きさは、4段階に分けると有意差は検出されず(p>0.2)、2mmを境に2つに分けると有意差がありました(p<0.04)。

続いて、術中・術後の要因です(図2)。

図2:術中・術後の要因と治療成績(原著の表5・表6の全行) 要因 本数 成功 不完全な治癒 失敗 検定 治療回数:1回 106本 85.8% 8.5% 5.7% p=0.052 治療回数:2回以上 272本 75.4% 18.4% 6.2% 充填の長さ:適切 306本 79.4% 16.0% 4.6% p<0.05 充填の長さ:不適切(長い・短い) 72本 73.6% 13.9% 12.5% 術中の偶発症:なし 315本 81.9% 13.7% 4.4% p<0.001 術中の偶発症:あり 63本 60.3% 25.4% 14.3% シーラーの溢出:なし(偶発症なし) 315本 81.9% 13.7% 4.4% p<0.003 シーラーの溢出:あり 30本 56.7% 26.7% 16.6% 再診まで:6か月 100本 66.0% 22.0% 12.0% p<0.003 再診まで:7〜12か月 255本 81.6% 14.5% 3.9% 再診まで:12か月超 23本 95.7% 0% 4.3% 修復:なし 4本 50.0% 0% 50.0% p<0.03 修復:仮封のまま 78本 80.8% 14.1% 5.1% 修復:最終充填 90本 80.0% 14.4% 5.6% 修復:ポストあり 142本 75.4% 19.7% 4.9% 修復:クラウンのみ 64本 81.3% 10.9% 7.8% 再診できた378本。6〜18か月後の判定。検定はカイ二乗検定(多変量の調整はない)。充填の長さの「適切」はX線上の根尖〜 2mm手前。 修復のp<0.03は、修復のある歯とない歯の比較。修復の種類どうしでは有意差は検出されなかった(p>0.7)。 シーラーの溢出の行は、原著の表5のとおり、偶発症のなかった315本との比較。対照群のない前向き研究で、シーラーはKetac -Endo。
図2:術中・術後の要因と治療成績。原著の表5・表6の全ての行をもとに作成。

術中に偶発症(穿孔、ファイルの破折、シーラーの溢出など)のあった63本は成功60.3%、なかった315本は81.9%でした(p<0.001)。いちばん多かった「偶発症」は、根尖孔の外へのシーラーの溢出です。溢出のあった30本は成功56.7%、失敗16.6%でした(偶発症のなかった315本との比較でp<0.003)。溢出したKetac-Endoは、観察期間のあいだ吸収されなかったと著者らは書いています。

治療回数は、1回の106本が成功85.8%、2回以上の272本が75.4%。成功・不完全な治癒・失敗の分布を比べた検定はp=0.052で、有意水準5%には達しませんでした(著者らは「統計的に境界」と書いています)。

単一コーンと側方加圧のあいだには、有意差は検出されていません(p>0.4)。術者、仮封材、充填の密度でも同じです。充填の長さは(充填の端がX線上の根尖から2mm手前までに収まるものを「適切」としています)、短い・適切・長いの3つに分けると有意差は検出されず(p>0.1)、短いものと長いものを「不適切」としてまとめると、「適切」とのあいだに有意差がありました(p<0.05)。

術後の要因では、再診までの期間で成績が分かれました。6か月で再診した100本は成功66.0%、7〜12か月の255本は81.6%、12か月を超えた23本は95.7%(p<0.003)。修復については、修復のない4本だけが成功50.0%・失敗50.0%で、修復の有無で有意差がありました(p<0.03)。修復の種類(仮封のまま、最終充填、ポスト、クラウン)どうしでは、有意差は検出されていません(p>0.7)。

⑤結果の読み方

著者らは、成功78.3%という数字を、過去の研究と並べて読んでいます。その際、この研究の成功率が低めに出る理由を3つ挙げています。

1つ目は、判定の基準です。病変が小さくなっただけでは成功に数えず、痛み・腫れ・瘻孔があればX線の所見にかかわらず失敗にしています(打診のわずかな違和感だけは、外傷性咬合・食片圧入・歯周病など、根尖部の治癒と関係のない原因でも起こるとして、成功でも許容)。2つ目は、対象の構成です。根尖病変のある歯が55%(209本)、再治療が34%(128本)を占めており、どちらも失敗と結びつきやすい条件です。3つ目は、観察期間の短さです。6〜18か月では治癒の途中の歯が多く、それが不完全な治癒の15.6%として表れている、という説明です。

そのうえで著者らは、成績の全体的な分布は、根管治療と再治療の予後研究で報告された範囲に入っており、Ketac-Endoを臨床で使えるシーラーとして支持する、と結論しました。

シーラーの溢出について、著者らの説明は慎重です。溢出したKetac-Endoは吸収されなかった。けれども骨の中では刺激物ではなく「インプラント」のようにふるまうと考えられるので、溢出した歯で失敗が多かったのは、術前の根尖病変などほかの要因が関係したのかもしれない。それでも、根尖部にしっかりしたストップを作って溢出は避けるべきだ、と。ここは著者らの推測で、溢出と病変の重なりを解析で分けたわけではありません。

感染根管を1回で治療した歯と、水酸化カルシウムを貼薬して複数回で治療した歯の比較も、考察に出てきます。感染のある歯では、複数回のほうが成功率が9%高く、失敗がほぼ半分だったが、有意差はなかった、と著者らは書いています。この内訳の数値は表には載っていません。

⑥明日の臨床へ

ここからは筆者の読みです。原著の主張ではありません。

この論文から持ち帰れるのは、「このシーラーが良い」という話よりも、成績の分布は、術前の歯の状態によって大きく違っていたという事実のほうです。同じシーラーを使った1つの研究の中でも、根尖病変のない歯は成功97.0%、ある歯は63.2%(3人の術者の歯を合わせた比較で、術者をそろえた比較ではありません)。新しい材料の成績を見るときは、対象の何割に病変があったか、再治療が何割かを先に確かめる。その習慣を後押ししてくれます。

観察期間の読み方も、参考になります。6か月で再診した歯の成功は66.0%、12か月を超えた歯は95.7%でした。ただし、これは同じ歯を追い続けた結果ではありません。再診の時期が違う別々の歯の比較です。12か月を超えたのは23本だけで、どんな歯が遅く再診されたのかも分かりません。「待てば治る」と読むのは行き過ぎで、「6か月の時点では、治癒の途中の歯がかなりある」くらいにとどめておくのがよさそうです。

単一コーンと側方加圧に有意差が検出されなかった点は、手技の手間を考えるうえで気になるところです。ただ、側方加圧の58本は1人の術者だけが治療した歯で、術者の違いと充填法の違いが重なっています。この結果だけで「単一コーンで同じ」とは言えません。

ここだけ、冷静に補助線新しいシーラーを、実験室ではなく患者さんの歯で評価した、当時としては貴重な前向き研究です。そのうえで、読むときの補助線をいくつか。
(1)対照群がありません。全ての歯がKetac-Endoで充填されており、ほかのシーラーより良いか、同じか、劣るかは、この研究からは分かりません。著者らの結論も「過去の報告の範囲内」という比べ方です。
(2)観察は6〜18か月です。再診の68%は7〜12か月、12か月を超えたのは23本(6%)でした。不完全な治癒の59本がその後どうなったか、長期にシーラーがどうふるまうかは分かりません。
(3)486本のうち108本(22%。486−378、筆者の計算)は再診できていません。著者らは、その多くが連絡のつかなかった患者さんの歯なので、再診できた歯は全体を代表していると述べていますが、確かめる方法はありません。
(4)診査とX線での再診は、治療した術者自身が行いました。盲検で行われたのは、病変の大きさの計測だけです。
(5)要因は1つずつカイ二乗検定にかけられています。根尖病変・再治療・症状・偶発症は互いに重なりやすい要因ですが、その重なりは調整されていません。多くの検定を行っていることにも注意が要ります。
(6)側方加圧の58本は、1人の術者だけの歯です。充填法の比較には、術者の違いが重なっています。
(7)シーラーと器材は、製造元のESPE社が提供しました。
(8)原著の表に、小さな不整合があります。病変の大きさの境目は、方法の節では「2mmより小さい」、表4では「2mm以下」と書かれており、2mmちょうどの扱いが本文と表で違います(図1は表4に従いました)。表4の「再治療のうち病変なし」は42本(20%)と書かれていますが、再治療128本に対しては約33%にあたります(筆者の計算。42÷128)。表5のシーラーの溢出の行は、偶発症のなかった315本と比べたものです。
材料の名前よりも、対象の歯の状態と観察期間を先に読む。その読み方を練習するのにちょうどよい研究、という位置づけで読むのがよさそうです。

今日のひとこと

この研究が示したのは、グラスアイオノマー系シーラー(Ketac-Endo)で根管充填して6〜18か月後に再診できた378本のうち、成功が78.3%、不完全な治癒が15.6%、失敗が6.1%だったということです。成績の分布は、根尖病変の有無、初回治療か再治療か、歯髄の生死、術前の症状などで有意に異なっていました。著者らは、過去の研究の成績と両立するとして、このシーラーの臨床使用を支持しています。ただし、ほかのシーラーと比べた対照群はなく、「ほかより良い」「同じ」とは言えません。観察は6〜18か月で、不完全な治癒がその後どうなったかは分かりません。486本のうち108本(486−378。筆者の計算)は再診できず、再診は治療した術者自身が行い、シーラーと器材は製造元の提供です。新しい材料の成績を読むときは、材料より先に、対象の歯がどんな状態だったかを見る。そのことを確かめさせてくれる1本です。

Friedman S, Löst C, Zarrabian M, Trope M. Evaluation of success and failure after endodontic therapy using a glass ionomer cement sealer. J Endod. 1995;21(7):384-390. doi: 10.1016/S0099-2399(06)80976-3. PMID: 7499981
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。