エンド|根尖病変の鑑別診断。手術前のデンタル・CBCTの見立てを、切除後の組織と照合した前向き研究(Bornstein 2015)
丸く、境界のはっきりした根尖の影。CBCTなら嚢胞か肉芽腫かまで見分けられるのでしょうか。根尖手術を受けた58人・58歯で、4人の画像診断を最終組織診断と比べると、一致度はデンタル κ=0.104、CBCT κ=0.111と、どちらも低い値でした。組織では嚢胞は3病変(5.2%)。画像だけの診断は暫定診断にとどまる、というのが著者らの結論です。
①CBCTで嚢胞と肉芽腫を見分けられる?
根尖の影が丸く、境界もくっきりしている。「嚢胞らしいですね」と説明したくなる場面だ。CBCTで立体的に見れば、その見立ては確かになるのだろうか。
Bornsteinらは、根尖手術を受けた58人・58歯の画像と組織を比較した。答えは、この研究では、デンタルでもCBCTでも、嚢胞か肉芽腫かの画像診断と組織診断の一致は低かった。影を詳しく見ることと、その正体を確定することには距離があった。
②丸く、境界明瞭なら嚢胞?
著者らは序論で、デンタルでは骨などの重なりで根尖病変が見えにくいことがあり、CBCTは病変と周囲の構造との位置関係を示せると説明している。ただし、それは嚢胞と肉芽腫を術前に見分けられるという話とは別だ。
今回の読影者に示された「嚢胞らしさ」の基準は、明瞭で硬化した境界、円形〜卵円形、通常5 mm超、皮質骨の穿孔や膨隆の可能性。肉芽腫の基準は、境界が不明瞭で硬化像がなく、内部が不均一なことがあり、通常5 mm未満で、皮質骨の穿孔や膨隆がないことだった。こうした見た目の基準が、切除後の組織診断とどれだけ合うのかを確かめた。
③手術前の画像を、手術後の組織と照合
スイス・ベルン大学の前向き研究である。登録は62人・62歯。標本が細かく断片化して組織評価できなかった4例を除き、58人・58歯を解析した。複数歯の手術を受けた患者では、解析する1歯を無作為に選んでいる。
- 画像は4人が独立に判定。口腔外科の専門医2人と研修医2人が、デンタルとCBCTで嚢胞か肉芽腫かを判断した。
- 組織は2人が独立に判定。画像の評価を伏せ、肉芽腫を上皮の有無で分け、嚢胞なども調べた。判定が違った例は話し合って最終診断を決めた。
比較の基準は、切除した組織の最終診断である。ここでの分母は、手術を受け、組織評価までできた58病変。日常診療で見つかる根尖の影すべてを集めた割合ではない。
④画像と組織の一致は低かった
CBCT
指標の読み方について筆者から補足すると、κ(カッパ)は、偶然の一致を考慮した一致度の指標だ。著者らは、どちらの値も一致が弱いと評価した。CBCTで組織の正体まで確定できる、という結果にはならなかった。この2つのκの差だけで、両者の診断性能が同等だと検定されたことにもならない。
一方、組織を評価した2人は、話し合いの前から58例中55例で一致していた(一致率94.83%、κ=0.8011)。これは組織を読む2人の一致であり、画像診断の正答率ではない。
⑤画像では嚢胞と判定する数が多かった
デンタル
CBCT
最終組織診断は、肉芽腫 55病変(94.8%)、嚢胞 3病変(5.2%)だった。肉芽腫の内訳は、上皮なし50病変、上皮あり5病変。対して画像では、どちらの方法でも嚢胞と判定する数が多かった。
なお、原著のCBCTの嚢胞割合はTable 4では34.5%、Table 6では33.6%と食い違う。平均19.5病変という数は両表で一致するため、図では病変数を示した。Table 6のデンタル25.9%・CBCT33.6%と組織5.2%との差は、それぞれ20.7・28.4パーセントポイント。原著は「%」と表記しているが、これは割合の差であり、誤診した患者の割合や相対的な増加率ではない。
⑥上皮があるだけでは、嚢胞としなかった
なぜ画像では嚢胞が多くなったのか。著者らは、画像の判定基準に幅があり、主観的な解釈が入りうることを理由の候補に挙げている。原因を実験で確定したわけではない。
この研究の組織診断は、上皮があるだけでは、嚢胞としなかった。空洞を作らず上皮が散在するものは「上皮あり肉芽腫」。嚢胞は、コラーゲン性の被膜に囲まれ、壁の内面が上皮で完全に裏打ちされた嚢胞腔を確認して診断した。画像の見た目と、この組織の基準は同じではない。
もう一つ、嚢胞は肉芽腫より画像上で大きく、その差はデンタル(P=.004)でもCBCT(3断面の平均をまとめた解析、P=.006)でも有意だった。著者らは、嚢胞を考える画像上のサイズ基準を5 mm超から10 mm超へ見直すことを提案している。ただし、10 mm超なら嚢胞と確定できる、という検証ではない。10 mm超への見直しは著者の提案で、この新しい基準で診断の当たり方を確かめ直した結果は示されていない。
⑦明日の臨床へ
この研究が確かめたことは、根尖手術例での画像診断と組織診断の一致である。ここから先は筆者の臨床的な読みで、治療法を変えた場合の成績を示すものではない。
- 「嚢胞らしい」と「嚢胞である」を分けて伝える。CBCTで境界や形が見えても、画像の見立ては暫定診断として扱う。
- 根尖手術で採取した組織を、画像との答え合わせにつなげる。著者らが確定診断のために重視したのは、組織による確認だった。
- 画像の見立てだけで、治療法を決めない。この研究は保存的な再治療と手術の成績を比べていない。「嚢胞らしい影だから手術」という治療選択を検証した研究ではない。
対象は根尖手術を受けた58病変で、嚢胞は3病変に限られる。著者らも、この症例数と診断の偏りを限界に挙げている。5.2%を、すべての根尖病変における嚢胞の頻度とは読めない。根尖と病変を別々に採取したため、真性嚢胞とポケット嚢胞は区別できなかった。
原著には前述の割合に加え、病変径の集計にも不整合がある。たとえば肉芽腫のデンタル平均径は本文6.09 mmだが、Table 5では上皮なし5.73 mm・上皮あり5.12 mmで、本文値を再現できない。CBCTの径や、病変の最大径(全体の表と群別の表)にも食い違いがあるため、径の数値はグラフにしていない。どちらが正しいかは原著だけでは決められない。
それでも、画像の見立てを切除組織と照合した設計は、「見える」と「見分けられる」を分けて考える手がかりになる。著者らは、嚢胞と肉芽腫をより均衡して含む大規模研究を求めている。
今日のひとこと
根尖手術58病変では、嚢胞か肉芽腫かの画像診断と組織診断の一致は、デンタルでもCBCTでも低かった。画像での見立ては暫定診断として、組織による確定と分けて考える。


