1問1答 論文 虫歯

CPP-ACPはフッ化物より優れているのか——12研究を集めたら、勝っていた相手はプラセボだった

1問1答 論文 虫歯

カリオロジー|CPP-ACP(MIペースト等)とホワイトスポットの再石灰化

初期う蝕の白斑に、MIペーストを勧める場面は少なくありません。矯正のブラケットを外したあとの白い痕にも、よく使われます。ですが「フッ化物より効くのか」と正面から問われると、僕らは急に歯切れが悪くなる。12本のランダム化比較試験を集めたレビューが、その歯切れの悪さの正体を教えてくれます。

論文
Remineralizing potential of CPP-ACP in white spot lesions – A systematic review
著者
Indrapriyadharshini K, Madan Kumar PD, Sharma K, Iyer K
掲載
Indian J Dent Res. 2018;29(4):487-496
種類
システマティックレビュー(RCT 12本・2005〜2016年)
PMID
30127201

「MIペースト、効きますか」に歯切れよく答えられない

初期う蝕の白斑に、CPP-ACP(MIペースト、GC トゥースムース等)を勧める場面は少なくありません。矯正のブラケットを外したあとの白い痕にも、よく使われます。

ですが「フッ化物より効くのか」と正面から問われると、急に歯切れが悪くなる。「プラセボより良いのはわかる。でもフッ化物に上乗せする意味があるのか」——ここが、はっきりしないからです。

12本のランダム化比較試験を集めたレビューが、その歯切れの悪さの正体を教えてくれます。

先に結論: 自然発生の早期う蝕を扱った4研究のうち3研究で、プラセボより有意に良かった。しかしフッ化物配合歯磨剤・フッ化物バーニッシュとの比較では、統計的に有意な差は示されていない。矯正後のホワイトスポットを扱った8研究では、4研究が「フッ化物バーニッシュに対する臨床的優位はない」と結論し、プラセボクリームを対照にした研究でも有意差が出ていないもの(Bailey 2009)がある

ペースト型に絞って、12本を集める

インド・チェンナイのRagas Dental Collegeによるシステマティックレビューです。

  • PubMedとGoogle Scholarを2005〜2016年で検索。英語論文のヒトRCTのみ。動物実験・in vitro は除外
  • 介入はペースト型のCPP-ACPに限定。シュガーレスガム・ロゼンジ・フッ化物ゲル・洗口液・抗菌ゲルの形は除外している——ここは読むときに効いてくる条件です
  • 重複を除いた295件から、タイトルで251件、抄録の査読で29件、全文の査読で3件を除外し、12研究が残った(※原著の記載は途中の件数が整合しない部分があります)
  • 内訳は自然発生の早期う蝕が4研究、矯正後のホワイトスポットが8研究
  • バイアスリスクは低い7研究・中等度3研究・高い2研究。主な問題はサンプルサイズの不十分さ・割付の隠蔽が不明・脱落率の記載欠如

評価法は研究ごとにばらばらで、ICDAS II(5研究)・DIAGNOdent(3研究)・DMFS(2研究)・定量光誘導蛍光法QLF(3研究)・写真(3研究)・エナメル脱灰指数EDI(2研究)が使われています。著者らは「単独で十分な信頼性を持つ方法はないので、今後は少なくとも2つを組み合わせるのが望ましい」と書いています。

もう一つ、気になる点。12研究のうちCPP-ACPの濃度を報告していたのは6研究だけで、その濃度も0.2%・0.2%・2%・10%・10%・1gとばらばらでした。市販製品の最高濃度が10%w/wであることを考えると、0.2%から10%まで50倍の開きがある製品が、同じ「CPP-ACP」として集計されていることになります。

プラセボには勝つ。フッ化物とは並ぶ

0 26.7% 53.3% 80% 24か月間で新しい病変ができなかった人の割合(%) 72.3% 53.2% 31.1% 2% CPP-ACP 0.76% SMFP(フッ化物) プラセボ Rao et al. 2009(インド・バンガロールのう蝕ハイリスク児12〜15歳、3群 計139名。原著は群とnの対応を明示していない)。有意差が報告されているのは「う蝕の増加量」についてで、CPP-ACP群・フッ化物群ともプラセボより有意に小さかった。グラフは新病変がなかった人の割合
Rao 2009。う蝕の増加量ではCPP-ACPもフッ化物もプラセボより有意に小さかったが、両者の間には差がなかった(グラフは新病変がなかった人の割合)

自然発生の早期う蝕を扱った4研究のうち、3研究がプラセボと比べて有意なう蝕増加の抑制を示しました。代表的なのがインド・バンガロールのう蝕ハイリスク児(12〜15歳)を24か月追ったRao 2009です。

  • 新しい病変ができなかった人の割合:2% CPP-ACP 72.3%/0.76% SMFP(フッ化物) 53.2%/プラセボ 31.1%(3群 計139名。原著は群とnの対応を明示していません
  • 有意差が報告されているのはう蝕の増加量についてで、CPP群とSMFP群のどちらもプラセボより有意に小さかった。ただしCPP群とSMFP群の間に有意差はなかった

残る1研究(Sitthisettapong 2012)は、2歳半〜3歳半の乳歯列で10% CPP-ACPペーストを1年間使い、フッ化物配合歯磨剤/プラセボと比べて病変の移行スコアに差なし(オッズ比 1.002、95%CI 0.86–1.17)でした。150名対148名という、このレビューでもっとも大規模な試験です。

0 2.7本 5.3本 8本 研究の数 3本 1本 4本 4本 自然発生の早期う蝕(4研究) 矯正後のホワイトスポット(8研究) 濃い棒=良い結果、薄い棒=差なし。自然発生う蝕の3本は「プラセボより有意」、矯正後の4本は「表層下病変の再石灰化を促した」という報告で、内容が異なる。矯正後で「差なし」の4本は、フッ化物バーニッシュに対する臨床的優位性がないと結論している
12研究の結論の内訳。自然発生う蝕の3本は「プラセボより有意」、矯正後の4本は「再石灰化を促した」という報告で、内容は異なる

矯正後のホワイトスポットを扱った8研究では、著者らの整理はこうです。4研究が「CPP-ACPの補助はフッ化物バーニッシュと比べて臨床的な優位性がない」と結論し、もう4研究は「CPP-ACPは表層下病変の再石灰化を促す」と報告した。

個別に見ると、こうなります。

  • Bailey 2009(10% CPP-ACPクリーム 対 プラセボクリーム):12週で移行スコアの分布に有意差なし(オッズ比 1.67、p=0.16)
  • Beerens 2010(CPP-ACP+NaF 対 フッ化物無配合ペースト+カルシウム+フッ化物歯磨剤):両群とも病変深さは改善したが、群間差なし(12週で 7.52±1.78 対 7.96±2.76)
  • Huang 2013(MIペーストプラス 対 5%フッ化物バーニッシュ 対 ホームケア):8週で群間差なし
  • Vashisht 2013(CPP-ACP 対 1450ppmフッ化物歯磨剤):DIAGNOdent値は両群で低下したが、試験群では統計的に有意でなかった(p=0.217)
  • 一方でAndersson 2007(CPP-ACP 対 0.05%NaF歯磨剤):両群とも改善したが、CPP-ACP群のほうが有意に良かった(63% 対 25%、p<0.01)。ただしこの研究は各群13名です
  • Bröchner 2011(CPP-ACP 対 1100ppmフッ化物歯磨剤):病変面積が58%減少(対照は26%)。ただし報告されているのは「介入群でベースラインと比べて有意」(p<0.05)であり、群間比較の記載ではありません

原著の結論文は、読み方に注意が要る

ここは正直に書いておくべきところです。原著の結論文はこうです。

原著の結論をそのまま訳すと「本システマティックレビューの限界の範囲内で、自然発生のホワイトスポットおよび矯正後のホワイトスポットに対するCPP-ACPの再石灰化能について、プラセボ/フッ化物配合歯磨剤/フッ化物バーニッシュとの比較において、統計的に有意な差なしに高いレベルのエビデンスが見出された」——「高いレベルのエビデンス」と「統計的に有意な差はない」が、一つの文に同居しています。おそらく著者らは「効果があること自体は複数のRCTで一貫して確認された(が、フッ化物と比べて優れているとは言えない)」という意味で書いているのですが、読み手によって正反対に受け取れる書き方です。

そしてもう一つ。このレビューにはメタ解析がありません。研究ごとに濃度も評価法も追跡期間(1か月〜2年)もばらばらで、統合された効果量は存在しない。著者らは「これらの違いが試験結果に影響しうる」と自ら書き、「この領域のエビデンスレベルを上げるには、よく設計されたRCTが必要である」と結んでいます。

つまりこの論文は、「CPP-ACPが効く」を証明した論文ではなく、「まだ決着していない」を丁寧に示した論文として読むのが正確です。

明日の臨床へ

  • 「フッ化物の代わり」としては勧められない。フッ化物歯磨剤・フッ化物バーニッシュとの比較で有意差が出た研究は限られ、矯正後では4研究が「優位性なし」と結論しています
  • 「フッ化物に加えて」なら、否定する理由もない。プラセボとの比較では3研究で有意差が出ており、有害事象の報告も軽微な消化器症状が1研究にあるだけです(ただし副作用について報告していたのは12研究中2研究だけで、安全性の記載自体が乏しい)
  • 製品の濃度を確認する。市販の最高濃度は10%w/wですが、このレビューには0.2%の製品も含まれています。「CPP-ACP配合」という表示だけでは、同じものを比べていることになりません
  • 効果判定には3か月以上を見る。著者らは「脱灰・再石灰化の変化を観察するには通常3か月以上の追跡が必要」と書いています(治療期間の指示ではなく、観察期間の話です)。4週や8週で「効かない」と判断するのは早い
  • ガム・タブレット型の話ではない。このレビューはペースト型に限定しています。同じCPP-ACPでも、剤形が違えば別の話です
ここだけ、冷静に補助線まず検索したデータベースがPubMedとGoogle Scholarの2つだけで、EmbaseやCochrane Libraryは含まれていません。英語論文に限定もしており、網羅性には限界があります(メタ解析もありません)。バイアスリスクが高い2研究(Wang 2012、Vashisht 2013)が含まれる一方、7研究は低リスクと評価されており、質はまだら模様です。個別の研究規模も小さく、Andersson 2007は各群13名、Llena 2015は各群20名。オッズ比についても一言。本文に出てくる1.002・1.67はいずれもオッズ比で、原著からは両群の割合が取れないためリスク比は計算できません。アウトカムが高頻度の集団では、オッズ比は「何倍なりやすいか」より大きめの数字になります。この規模で「差がなかった」と言われても、差を検出する力があったのかは分かりません。それでも、プラセボには勝ち、フッ化物とは並ぶという全体像は、複数の研究で一貫しています。「効かない」でも「フッ化物より効く」でもなく、その中間に置いておく——それが現時点でいちばん誠実な扱い方だと思います。

今日のひとこと

自然発生の早期う蝕では、4研究中3研究でプラセボより有意に良かった。しかしフッ化物歯磨剤・フッ化物バーニッシュとの比較では、統計的に有意な差は示されなかった。「フッ化物の代わり」ではなく「フッ化物に加えて」という位置づけのまま、証拠はまだ動いていない。

Indrapriyadharshini K, Madan Kumar PD, Sharma K, Iyer K. Remineralizing potential of CPP-ACP in white spot lesions – A systematic review. Indian J Dent Res. 2018;29(4):487-496. PMID: 30127201
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。