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そのポケットの底、副根管とつながってる?──歯を100本調べた古典

歯周病 歯内歯周 論文解説

副根管とポケットの関係 | JADA

「歯周ポケットの奥に副根管が口を開けていて、そこから歯髄と歯周組織が感染をやり取りする」——歯内-歯周病変を語るときによく出る話です。でも、それは実際どれくらいの頻度で起きるのか?1975年、Kirkhamは重度歯周病で抜かれた歯100本に造影剤を注入し、副根管がポケット内に開口する頻度を数えました。結果は、副根管そのものは23本(23%)にあったのに、ポケット内に開口していたのはわずか2本(2%)でした。

論文
The location and incidence of accessory pulpal canals in periodontal pockets
著者
Kirkham DB
掲載
J Am Dent Assoc (JADA). 1975;91(2):353-356
種類
抜去歯の観察研究(造影剤注入・エックス線・組織像で確認)
PMID
1056405

そのポケットの底、副根管とつながってる?

「歯周ポケットの奥に副根管(側枝)が口を開けていて、そこから歯髄と歯周組織が感染をやり取りする」——歯内-歯周病変を語るときによく登場する話です。でも——それは実際どれくらいの頻度で起きているのか?。1975年、Kirkhamは重度歯周病で抜かれた歯100本に造影剤を注入し、副根管が「ポケットの中に開口する」頻度を正面から数えました。

従来の悩み:関係は語られても、頻度は誰も数えていなかった

歯髄の炎症が側枝を通って歯周組織を壊す、逆に歯周ポケットの毒性物質が側枝から歯髄を侵す——こうした歯内-歯周の相互作用は古くから議論されてきました。furcation(根分岐部)や根面の側枝の頻度を報告した研究はあったものの、「副根管が歯周ポケットや歯周欠損の内側に開口している頻度」を調べた研究は、それまで一つもなかったのです。つながり得るのは分かっても、実際どれだけ起きるかは空白でした。

今回の一手:抜去歯100本に造影剤を注入して数える

方法はていねいです。重度歯周病で抜歯が必要な永久歯100本(13人・23〜53歳の男性)を対象に、抜歯前に歯周ポケットを1本あたり6か所、CEJ(歯頸部の境目)から欠損底まで測定して記録。抜歯後に歯髄を除去して次亜塩素酸ナトリウムで洗浄し、ヨード造影剤(Lipiodal)を加圧注入して多方向からエックス線撮影しました。側枝の開口部をCEJから0.1mm単位で測り、先のポケット深さの記録と突き合わせて「ポケット内かどうか」を判定。さらに10本は組織切片でも確認し、注入法の妥当性を裏づけています。

では、副根管はどれくらい見つかり、そのうちポケット内に開口していたのは何本だったのか。

結果:副根管は23%にあった。だがポケット内はわずか2%

重度歯周病で抜いた歯100本を調べたら 造影剤を注入しエックス線と組織像で副根管(側枝)の位置を確認 副根管を持つ歯23%23本 / 100本ポケット内に副根管2%2本 / 100本 副根管はそこそこ在る。だが「ポケット内」に開口するのは稀(2%) 副根管を持つ歯に限っても8.7%。側枝の多くは根尖1/3・根分岐部からはゼロ。Kirkham 1975
重度歯周病で抜去された歯100本。副根管そのものは23本(23%)にあったが、ポケット内に開口していたのはわずか2本(2%)。副根管を持つ歯に限っても8.7%——歯内-歯周の「直接連絡」は稀だった(Kirkham 1975)

100本のうち副根管を持っていたのは23本(23%)。うち6本は2本の側枝を持ち、3本以上はゼロでした。歯種別では下顎小臼歯(53.3%)と下顎大臼歯(44.5%)で高く、上顎大臼歯(7.1%)と下顎前歯(10%)で低い。そして肝心の問いへの答えは——副根管がポケット内に開口していたのは、100本中わずか2本(2%)。副根管を持つ23本に限っても8.7%にすぎませんでした。しかも側枝の多くは根尖1/3にあり、ポケット底が届きにくい位置。根分岐部から見つかった側枝はゼロでした。

なぜ?──側枝は根尖寄り、ポケットは根尖まで届きにくい

カギは「位置のミスマッチ」です。副根管の多くは根尖1/3に集中します。一方、歯周ポケットは歯頸部側から進むため、側枝の開口部とポケット底が同じ高さで重なる場面が少ない。だから副根管そのものは珍しくない(23%)のに、ポケット内に顔を出すのは稀(2%)になる、という構図です。実際にポケット内に側枝を持っていた2本(上顎第一小臼歯の歯頸側1/3・下顎第二大臼歯遠心根の中央1/3)でも、歯髄が原因か歯周が原因か、側枝が関与したのかどうかは判定できなかったとKirkham自身が述べています。

つまり: 副根管は23%に存在するが、ポケット内に開口するのは2%と稀。歯内-歯周の「直接の連絡路」は、思われているほど日常的ではない。

明日の臨床へ:破壊の原因を安易に”側枝のせい”にしない

歯周組織の破壊を見たとき、その原因を反射的に「副根管経由の歯髄感染」と決めつけないのが現実的です。この研究が示すのは、重度歯周病の歯でさえ、ポケット内の側枝は50本に1本という頻度だという事実。日常の歯周治療の主役はあくまで機械的なプラークコントロールとデブライドメントです。ただし例外もある——単独歯の深い垂直性骨欠損、歯髄反応が怪しい歯、通常の歯周治療に反応しない難治例では、歯内-歯周病変を鑑別に入れ、必要なら歯内療法を組み合わせる価値があります。「稀だが、ゼロではない」という距離感が使いやすい。

ここだけ、冷静に補助線1975年、対象は13人・100本という限られた標本で、造影剤の注入とエックス線という検出法には見落としの可能性もあります(微細な側枝や造影剤が届かない枝は写らない)。頻度の絶対値は研究ごとにばらつく(本研究の側枝23%に対し45%の報告もある)ものの、「副根管はそこそこ在るが、ポケット内に開口するのは稀」という骨子は、その後の歯内-歯周病変の理解と矛盾しません。

今日のひとこと

重度歯周病で抜去された歯100本のうち、副根管(側枝)を持つ歯は23本(23%)。しかし副根管がポケット内に開口していたのはわずか2本(2%)で、副根管を持つ歯に限っても8.7%だった。副根管の多くは根尖1/3にあり、ポケット底の届く位置に開口することは稀。歯周組織破壊の原因を安易に「副根管経由」と決めつけない。ただし垂直性骨欠損で歯髄が絡む難治例では歯内-歯周病変を鑑別に入れる、という距離感が現実的。

出典(PubMed):Kirkham DB. The location and incidence of accessory pulpal canals in periodontal pockets. J Am Dent Assoc. 1975;91(2):353-356. PMID:1056405 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1056405/
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